抄録
目的: 本研究の目的は, 歯科用合金を被着体として, シリカ・コーティング法 (Rocatec®-System, ESPE) が前装用硬質レジンとの接着強さに及ぼす影響を調べることにある.
方法: 市販されている4種類の歯科用金属 (Pt-Au, Co-Cr, Au-Ag-Pd, Ti) を10×15×2mmに加工・研磨後 (#600), 1. アルミナ・サンドブラスト処理のみの群 (SB群), 2. 処理後接着性プライマーを塗布した群 (MP群), 3. Rocatec®-System (RP群) によるシリカ・コーティング法を用いた群, 以上の3群に分け, 表面性状の分析 (SEM像・EPMA) および硬質レジン (グラディア, ジーシー) との剪断接着強さを計測した. 統計処理は一元配置分散分析 (多重比較検定: Scheffe's F, α=0.05) にて行った.
結果: 表面性状の分析結果から, シリカ・コーティング後のすべての金属表面に, 特徴的なシリケート層が確認された. 剪断接着強さ試験の結果は, すべての金属においてSB群に比べMP群とRP群が, また, Pt-Auにおいては, MP群に比べRP群が有意に (p<0.05) 高い接着強度を示した.しかしながら, Co-Cr, Au-Ag-Pd, およびTiではMPとRPに有意差は認められなかった.
結論: 本研究結果より, Rocatec®-Systemによるシリカ・コーティング法は, 歯科用金属に対し強固なシリケート層を形成させ, 接着のための表面改質法として有効であることが示唆された.