抄録
目的: 本研究の目的は, 従来の下顎頭運動の評価法によって得られる情報を再確認するとともに, 従来法との比較から四次元解析法の特長と, その有用性について検討することである.
対象と方法: 従来法に関しては, すでに正常者, 顎機能異常者を対象とした多くの研究が報告されていること, また, 今回はそれぞれの評価法の特長をより明確にすることを目的としていることから, 特徴的な顎運動所見を示す顎機能異常者1名を対象とした.この症例に対して, 6自由度顎運動測定装置を用いて前方・後方運動および左右側方滑走運動を記録し, 切歯点・左右第一大臼歯および左右顆頭点を解析点として評価を行った.さらに, CTデータセットから頭蓋骨および下顎骨を三次元再構築し, 下顎運動データで駆動した (四次元解析法).
結果および考察: 従来法によって比較的多くの情報を得ることが可能であった.咬合平面と両側顆頭点を連ねた線の動きを観察することにより, 下顎全体としての評価が可能であった.さらに, 解剖学的顆頭点における運動の観察を行うことにより, 作業側下顎頭運動を把握することが可能であった.四次元解析法では解剖学的形態と下顎運動の関係が明らかとなり, 顎関節の診査, 診断, 治療を進めるうえで有効な手段となると思われた.
結論: 従来の評価法によって, 病態をある程度推察することができた.また, 四次元解析法は従来の評価法にはない利点を有している可能性が示された.