日本補綴歯科学会雑誌
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口腔内におけるエナメル質切削表面の経時的変化に関する研究
連 直子
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2004 年 48 巻 1 号 p. 84-93

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抄録

目的: 部分床義歯作製時の補綴前処置として支台歯に付与されるレストシートやガイドプレーンは, 多くの場合, 天然歯の歯質を削除して形成され, そのまま口腔内に露出するが, その形成面が口腔内で, 長期的に安全であるか否かに関しては, これまで確たる検討はされていない.そこで, 本研究では, 切削されたエナメル質の経時的な形態学的変化を観察し, 検討を行った.
方法: ヒト抜去歯片のエナメル質を部分的に切削した試料を口蓋床に設置して, 5人の被験者の口腔内に一定期間装着した.4, 8, 12, 24週間装着後, 光学顕微鏡, 走査電子顕微鏡 (SEM), 透過電子顕微鏡 (TEM) による観察, およびX線マイクロアナライザー (EPMA) による分析を行った.
結果: 口腔内装着4週間の試料では, エナメル質の最表面上に, 菲薄な膜状構造物が生成, 沈着しているのが観察されたが, コントロールではみられなかった.口腔内装着試料の膜状構造物は漸次その厚みを増し, 口腔内装着24週間では, 滑沢で均一な状態となってエナメル質の切削表面全体を覆うように形成されていた.その電顕的所見から, 膜状構造物は歯小皮第2膜が切削表面に再生されたものであると考えられる.また, 歯小皮直下のエナメル質では, 微細構造およびCa, Pの分布状態に著しい変化は認められなかった.
結論: 口腔内において, エナメル質の切削表面には, 天然歯と同様に歯小皮第2膜が再生し, その直下のエナメル質では, 約6カ月間経過しても, う蝕などの変化は観察されなかった.

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