日本補綴歯科学会雑誌
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義歯床下粘膜への負担圧分布からみた選択
永尾 寛河野 文昭市川 哲雄
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2004 年 48 巻 5 号 p. 673-680

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抄録

全部床義歯の人工歯排列には, 義歯床の力学的な安定の獲得と生理的, 機能的運動や審美性の回復が要求される.ところが, 義歯の維持・安定を考えたとき, これらの要求は互いに相反しており, 顎堤の吸収が著しく義歯の安定が得られにくいような症例では, 両者を満足させるような人工歯排列は非常に困難である.以前よりわれわれは, 全部床義歯の臼歯部人工歯の選択, 排列法について1つの指針を設けることを目的として, 上下無歯顎シミュレーションモデル上で荷重実験を行い, 臼歯部人工歯の咬合面形態や咬合様式の違いが負担圧分布に及ぼす影響について検討を加えてきた.今回は, これまでの研究成果をもとに, 義歯床下組織の負担圧分布から咬合様式の選択法についての私案をまとめた.フルバランスドオクルージョンとリンガライズドオクルージョンでの負担圧分布を比較したところ, 咬合様式の違いが義歯床下粘膜の負担圧分布に与える影響は大きかった.しかし, 咬合様式が同じでも臼歯人工歯の咬合面形態や頬舌的排列位置よって負担圧分布に違いが現れ, また, これらの要因は互いに影響を及ぼし合っている.したがって, 全部床義歯作製時には, 咬合様式のみでなく咬頭傾斜角や咬合面形態も考慮し, 臼歯人工歯のあり方を総合的に判断する必要がある.

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