日本補綴歯科学会雑誌
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咀嚼機能からみた選択
小出 馨
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2004 年 48 巻 5 号 p. 681-690

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抄録

本論文では, 有床義歯に付与する咬合様式であるフルバランスドオクルージョンとリンガライズドオタルージョンの特徴を咀嚼機能の面から検討し, 症例に応じた咬合様式の選択と設定の基準を明確にしようと努めた.従来, フルバランスドオクルージョンとリンガライズドオクルージョンを咀嚼機能から定量的に比較した研究は少ないため, 本論文ではこれまでに当教室で行ってきた一連の研究で得られた知見をもとに, 両者の特徴を整理して示すことにした.その結果, フルバランスドオクルージョンと比較してリンガライズドオクルージョンは, 食品破砕能が高く, 硬性食品でより高い咀嚼値を示し, 迅速でしかも円滑な咀嚼運動を行い, よりチョッピングに近い咀嚼パターンを示した.また, 普段の食事においても, フルバランスドオクルージョンと比較してリンガライズドオクルージョンは, 「より食べやすく, 美味しく食べられた」との被験者による主観的評価が得られた。さらに, リンガライズドオクルージョンにおける上顎臼歯舌側咬頭の形態を解剖学的形態とブレード形態で比較した結果, 解剖学的形態と比較してブレード形態は, 咀嚼値では各種被験食品のいずれにおいても差が認められなかったが, 食品破砕能が高く, 迅速で円滑な咀嚼運動を行い, よりチョッピングに近い咀嚼パターンを示した.また, ブレード形態は解剖学的形態と比較して, 一般に有床義歯では食べにくいとされる硬性食品の生ニンジンとタクアンで, より食べやすいとの被験者による主観的評価が得られた.

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