2006 年 50 巻 3 号 p. 345-352
本論文は, 日本補綴歯科学会第114回学術大会 (平成17年10月1~2日, 新潟市) で催されたシンポジウム「歯科補綴のストラテジックプラン」において発表された内容に基づき, 歯科補綴学, 補綴歯科臨床の将来展望と研究戦略プランを総括したものである.
歯科補綴学には, 歯科補綴装置により回復される形態, 機能に関する研究と, 力に対する生体応答, マテリアルによる生体応答をはじめとする歯科補綴装置と生体組織との間での生体応答に関する研究, マテリアルに関する研究がある. すなわち, 補綴歯科臨床では, 生体 (筋) の発揮する機能力が補綴装置を介して残存歯, 顎堤等の生体組織で支持することにより機能の回復が達成される. これが補綴歯科治療の本質であり, また他の医療, 歯科医療と比較した際の最大の特色である.
このような認識に基づく戦略プランとしては, 基盤戦略としてメカニカルストレスによる生体応答の解明など生物学的基盤の確立と, EBMとして治療効果の評価・確立が提示された. さらに創生戦略として異分野連携による新材料, 新技術の開発, 導入の必要性が示された.