目的: 本研究の目的は, 側頭下顎障害 (TMD) 患者の咀嚼機能を客観的に評価することである.
方法: グミゼリー咀嚼時の咬筋筋活動, 下顎切歯点の運動の安定性, 咀嚼能率の定量的指標について, 健常者10名, 関節原性TMD患者10名, 筋原性TMD患者10名の三群間で比較した. 咬筋筋活動については, 咬筋筋活動の積分値を算出した. 運動の安定性については, 運動経路と運動リズムの安定性を表す7指標のデータについて, 主成分分析を行い, 主成分スコアを算出した. 咀嚼能率については, グミゼリー咀嚼後のグルコースの溶出量を血糖測定機器で測定した.
結果: 咬筋筋活動の積分値は, 健常者群が関節原性TMD患者群, 筋原性TMD患者群よりも著明に大きく, 健常者群と関節原性TMD患者群, 筋原性TMD患者群との間にそれぞれ有意差が認められた. 運動経路と運動リズムの安定性の主成分スコアは, 健常者群が関節原性TMD患者群, 筋原性TMD患者群よりも著明に小さく, 健常者群と関節原性TMD患者群, 筋原性TMD患者群との間にそれぞれ有意差が認められた. グルコースの溶出量は, 健常者群が関節原性TMD患者群, 筋原性TMD患者群よりも著明に多く, 健常者群と関節原性TMD患者群, 筋原性TMD患者群との間にそれぞれ有意差が認められた.
結論: 側頭下顎障害患者の咀嚼機能は, 健常者のそれよりも有意に劣ることが示唆された.
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