抄録
目的: 各種市販歯冠用硬質レジンペーストの賦形性に影響する流動性を調べることを目的に, 各種ペーストの挙動と築盛操作時の温度依存性について検討を行った.
方法: 使用材料は現在臨床で用いられている5種類の前装用硬質レジンであるニューメタカラーインフィス, ソリデックス, セラマージュ, グラディア, エステニアC&Bを使用し, 各ペーストの組成分析と流動性を調べた. 硬化前レジンペーストの粘度は, コーンプレート型回転粘度計を用いて測定を行った.
結果: 各レジンペーストは非ニュートン流動を示し, 流動曲線は上昇曲線と下降曲線の異なるヒステリシス曲線を描いた. また各レジンペーストの各流動曲線 (20℃, 25℃, 30℃) における保留開始時のずり応力を測定した結果, 20℃のずり応力は25℃, 30℃ に対し有意に大きく, 25℃ のずり応力は30℃に対し有意に大きな値を示し, 低温側で粘性が高い傾向を示した. 保留前後のずり応力の比較では, エステニアC&Bを除いて, 他は全て保留前が保留後よりも有意に大きな値を示した.
結論: 今回使用した各種レジンペースト全てにおいて作業温度の20-30℃ 間で温度依存性, チキソトロピー性を有していた. しかし歯冠用レジンペーストは, ペーストの種類により, 流動性に大きな差がありレジン築盛時の操作性に大きく影響を及ぼしていることが示唆された.