日本補綴歯科学会雑誌
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固定性遊離端床装置を最終補綴として応用した重度歯周病症例
濱田 直光永田 睦濱田 敦子
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2006 年 50 巻 4 号 p. 534-541

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抄録

I. 症例の概要固定性遊離端床装置free-end saddle-bridge (以下FESBと略) は, 1970~80年代にかけてIzikowitzによって発表された補綴装置で, 延長ブリッジの遠心部を粘膜面に支持を求めたセメント合着による固定性遊離端床義歯である. しかし, 現在では, 暫間的な使用を除いてほとんど報告例がみられない. 今回我々は, 重度歯周病患者の治療に際し, FESBを応用して治療を行い, 結果的にFESBを最終補綴として修復した症例を報告した. 患者は40歳女性で, 全顎にわたり歯周炎が進行し, 歯の動揺が著しく, 摂食困難な状態であった. 上顎の全残存歯周囲に6mm以上の深い歯周ポケットが認められた. 保存不可能な歯の抜歯を行った後, 歯周治療を開始した. 患者の嘔吐反射が著しかったため, 歯周治療用装置として, セメント合着によるFESBを装着し, 歯内療法, 歯周治療, 補綴, 外科処置など一連の歯科治療を行った. 治療結果は治療終了後も良好に維持されている.
II. 考察FESBの使用により, 歯周病学的各パラメーターの改善が認められ, FESBの使用によって, 一連の歯科治療を円滑に遂行し得ただけでなく, 治療期間中の患者のQuality of lifeの高揚・維持が図られた.
III. 結論本症例は, 類似の症例における治療および補綴法の選択肢の一つになり得ることが示唆された. FESBに関しては報告例が少なく, 今後さらなるデータの蓄積と検討が必要と考えられる.

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