論文ID: JJPTF_2025_S2
糖尿病はアルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)の発症リスクを高めることが知られている。ADを特徴付ける脳内病理像の1つである神経原線維変化は,主にリン酸化タウ蛋白から構成され,その蓄積量が認知機能障害の重症度と相関する。そのことから,リン酸化タウ蛋白はADの発症において重要な役割を果たすと考えられている。筆者らはこれまで,糖尿病合併ADマウスモデルを用いて,糖尿病によるADの発症リスク増加の基盤にある分子メカニズムについて解析してきた。その結果,糖尿病合併ADマウス脳内におけるタウ蛋白の特徴的なリン酸化パターンや,それに関与する可能性のある6種類のキナーゼが明らかになった。これらの結果は,タウ蛋白のリン酸化が糖尿病とADをつなぐメカニズムの1つであることを示唆する。本総説では,タウ蛋白のリン酸化に焦点を当てて,糖尿病によるADの病態修飾メカニズムについて概説する。