基礎理学療法学
Online ISSN : 2436-6382
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原著
  • 林 哲弘, 高崎 浩壽, 末廣 健児, 石濱 崇史, 鈴木 俊明
    原稿種別: 原著
    2024 年 27 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/31
    [早期公開] 公開日: 2023/12/13
    ジャーナル フリー

    本研究は,運動観察時に提示される運動の筋収縮強度に対する主観的認識の違いが脊髄運動神経機能の興奮性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。対象者は健常成人22 名とし,F 波は右母指球上の筋群より導出した。測定の流れは,安静時のF 波を1 分間測定し,4 分間の休息後,運動観察時のF 波を1 分間測定した。観察課題は,母指の内転・外転運動(無負荷映像)と2 種類のセラバンドで母指に負荷を与える(低負荷映像・高負荷映像)とした。また,対象者の認識に基づいて,主観的高負荷,主観的低負荷,主観的無負荷に分類し,各条件間の振幅F/M 比相対値を比較した。振幅F/M 比相対値は,主観的無負荷・低負荷条件と比較し主観的高負荷条件で増加した(p <0.05)。結果より,運動観察において対象者に強い筋収縮が必要な運動であると認識させることで脊髄運動神経機能の興奮性は増加することが示唆された。

  • 山本 怜, 岡 真一郎, 今田 沙也夏, 髙野 吉朗
    原稿種別: 原著
    2024 年 27 巻 1 号 p. 8-15
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/31
    [早期公開] 公開日: 2023/12/23
    ジャーナル フリー

    【目的】胸腰背部に対する持続的押圧刺激(Continuous Pressure Stimulus:以下,CPS)が腸蠕動音(Bowel Sound:以下,BS),自律神経活動に与える影響について検討した。【方法】対象は健常女性12 名(平均年齢22.5 ± 1.3 歳,身長1.56 ± 0.05 m,体重51.8 ± 4.2 kg,BMI21.4 ± 1.7 kg/m2)とした。評価項目は,排泄状況の問診および排泄のQOL,BS,心電図,血圧(BP)とした。胸腰背部へのCPS は,30 mmHg で15 分間とした。CPS 前後の比較は,BS,心拍数(以下,HR),心拍変動解析は二元配置反復測定分散分析および多重比較法としてFisher's PLSD,BP は対応のあるt 検定を用いて分析した。【結果】CPS 前後の単純主効果については,介入群ではCPS後5分でBS,LF,LF/HF が有意に上昇し,コントロール群ではCPS 後5 分,10 分でHR が有意に減少したが,両群間で交互作用はなかった。【結論】胸腰背部へのCPS は,生理的な範囲での腸蠕動運動を誘発することが示唆された。

  • 寺田 秀伸, 小島 拓真, 高須 千晴, 川端 空, 二瓶 孝太, 高柳 清美, 金村 尚彦, 村田 健児
    原稿種別: 原著
    2024 年 27 巻 1 号 p. 16-24
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/31
    [早期公開] 公開日: 2024/01/15
    ジャーナル フリー

    【目的】前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament:以下,ACL)の損傷後における保存療法の実現にはACL を構成する線維芽細胞の活性化が必要である。そこで隣接する脂肪組織である膝蓋下脂肪体に着目し,細胞間相互作用によるACL 由来線維芽細胞の活性化を検証することを目的として培養実験を行った。【方法】Wistar 系雄性ラットのACL から線維芽細胞を分散し,第3 継代の細胞を実験に用いた。単培養を行うMono-culture 群と,膝蓋下脂肪体との共培養を行うCo-culture 群に対し,生体外創傷治癒試験およびRealtime qPCR 解析による遺伝子発現量の調査を行った。【結果】生体外創傷治癒試験では,Mono-culture 群と比較しCo-culture 群において創傷部への有意な細胞浸潤を認めた。しかし,浸潤した細胞数に差は認めず,線維芽細胞の増殖や遊走に関与するTGFβ1 の遺伝子発現量にも有意差を認めなかった。【結論】膝蓋下脂肪体との共培養によりACL 由来線維芽細胞の遊走能が向上することが示唆されたが,そのメカニズムについてはさらなる解析が必要である。

  • 木下 晃紀, 山本 吉則, 嘉戸 直樹, 鈴木 俊明
    原稿種別: 原著
    2024 年 27 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/31
    [早期公開] 公開日: 2024/02/09
    ジャーナル フリー

    感覚が障害されると運動調節が困難になるため,運動療法の際に手掛かりを設置する工夫を行う。本研究は,体性感覚を手掛かりに運動調節する際の体性感覚機能への影響を体性感覚誘発電位にて検討した。対象は健常成人20 名とした。課題は1 Hz の頻度で行う0~20°までの母指掌側外転の反復運動とした。non-target 課題は目標を置かず,target 課題のみ正確な運動調節の手掛かりとして20°の位置に触知可能な目標を置いた。N9,N13 振幅は安静時と両課題で変化を認めず,N20 振幅は安静時と比べて両課題,target 課題と比べてnon-target 課題で低下した。目標角度からの絶対誤差はnon-target 課題と比べてtarget 課題で減少した。随意運動中は体性感覚入力が抑制され,一次体性感覚野由来のN20 振幅が低下すると言われているが,target 課題は触覚を基に正確に運動調節するため,non-target 課題よりも抑制作用が減弱したと考えた。

  • 武内 彩佳, 谷 浩明, 渡邉 観世子
    原稿種別: 原著
    2024 年 27 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/31
    [早期公開] 公開日: 2024/02/22
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究は妊婦転倒予防のための動作指導の立案を目指し,妊娠後期の体型における転倒の要因を検討した。【方法】健常若年女性20 名を対象に,妊婦体験ジャケット着用による運動イメージの正確性,転倒恐怖感(ABC scale),またぎ動作(5 cm・15 cm/ 荷物把持の有無)と歩行時の足部クリアランスの変化を計測した。【結果】妊婦体験ジャケット着用時には転倒恐怖感が高まり,10 m 最大歩行課題の運動イメージでは過小評価を示した。またぎ動作では妊婦体験ジャケットの有無にかかわらず,荷物を把持した条件で引き込み足の足部クリアランスが増加した。また低い障害物をまたぐ際には,妊婦体験ジャケット着用時に有意に足部クリアランスが低下した。【考察】妊娠後期の体型は転倒リスクが高まることが示され,その背景には,荷物把持時の過剰な下肢挙上に伴う姿勢の不安定さや低い段差をまたぐ際の足部クリアランスの不十分さが影響していると考えられた。

  • ─Freeze Indexに関する予備的研究─
    武田 超, 荒巻 晋治, 横山 絵里子, 今野 洋平, 加藤 理久, 須藤 恵理子
    原稿種別: 原著
    2024 年 27 巻 1 号 p. 39-46
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/31
    [早期公開] 公開日: 2024/10/08
    ジャーナル フリー

    【はじめに】すくみ足の客観的評価として加速度から算出するFreeze Index(以下,FI)が報告されてい る。今回は,有用なFIの算出方法を探索するために,加速度センサの装着箇所とFIのウィンドウ幅に関して特徴量選択の観点から検討を行った。【方法】対象はすくみ足を認めたパーキンソン病患者7名とした。加速度計は腰部および両下腿に装着した。FIは加速度の鉛直成分をSTFT解析し算出した。FIは,単一センサおよび複数センサにおいて,6つのウィンドウ幅で算出した。各FIを相互情報量とk近傍法によるユークリッド距離の重要度でランク付けした。【結果】両方の解析で上位に選択された特徴量は, 「単-右-6」,「単-左-6」,「単-腰-6」,および「複(max)-腰・両足-1」であった。【結論】今回の検討では,単一センサによるウィンドウ幅6秒のFIが有用であることが示唆された。

総説
  • ―システマティックレビュー・メタ分析を用いた検討―
    武内 孝祐
    原稿種別: 総説
    2024 年 27 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/31
    [早期公開] 公開日: 2024/08/09
    ジャーナル フリー

     静的ストレッチングは関節可動域向上,スティフネス低下,障害予防を目的として広く用いられている。先行研究において静的ストレッチング後に関節可動域は向上することが明らかとなっている。一方で,スティフネスおよび筋・腱障害に対する静的ストレッチングの効果は明らかでない。よって我々はシステマティックレビュー・メタ分析にて静的ストレッチングが筋腱複合体スティフネス,筋スティフネス,筋障害,腱障害に及ぼす影響を検討した。本研究の結果,長期間の静的ストレッチングにより筋スティフネスは低下するが,筋腱複合体スティフネスは変化しないことが明らかとなった。また,静的ストレッチングにより筋障害の発生件数は減少するが,腱障害の発生件数は変化しないことが示された。以上より,静的ストレッチングは特に筋に対して大きな効果を有しており,その結果,筋スティフネス低下と筋障害予防には有用であることが示唆された。

  • 佐々木 亮樹, 大西 秀明
    原稿種別: 総説
    2024 年 27 巻 1 号 p. 52-61
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/31
    [早期公開] 公開日: 2024/08/10
    ジャーナル フリー

     体性感覚の知覚には,脳内において非常に複雑な処理が要求される。知覚には,中心後回に位置する一次体性感覚野が密接に関与することが周知の事実である。近年,脳イメージング装置と脳機能解析技術の飛躍的な進歩により,体性感覚処理には一次体性感覚野だけでなく,複数の脳領域が共同的に関与することが明らかになっている。我々の研究グループでは,体性感覚処理の二点識別覚に着目し,この処理には複数の大脳皮質領域が関与することを機能的かつ構造的な視点から明らかにした。本総説では,これらの研究に基づき,二点識別覚に関与する特定の大脳皮質領域について解説する。次に,我々が取り組む体性感覚機能の強化を目的とした非侵襲的脳刺激における最新の知見と課題に言及する。また,上記の我々の脳イメージング研究に基づいた非侵襲的脳刺激戦略についても紹介し,脳卒中後の体性感覚障害を対象としたリハビリテーション応用への可能性を模索する。

  • 佐藤 成, 中村 雅俊
    原稿種別: 総説
    2024 年 27 巻 1 号 p. 62-67
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/31
    [早期公開] 公開日: 2024/08/11
    ジャーナル フリー

     筋力増強や筋肥大を効率的に生じさせるレジスタンストレーニング処方は,時間に制約のある臨床現場において非常に重要である。我々はレジスタンストレーニングにおける関節角度や筋収縮様式の違いが筋力増強や筋肥大に及ぼす影響を検討した。その結果,筋短縮位となる関節角度と比較して筋伸張位となる関節角度でのレジスタンストレーニングで最大筋力と筋厚が有意に増加した。また,他の筋収縮様式を用いたトレーニングと比較して伸張性収縮を用いたレジスタンストレーニングは筋力増強および筋肥大効果が高い可能性を示すことができた。以上より,レジスタンストレーニング処方では,筋伸張位となる関節角度と伸張性収縮を取り入れることで筋力増強および筋肥大効果が高まる可能性がある。

  • ―健常者~神経変性疾患への応用―
    西川 裕一
    2024 年 27 巻 1 号 p. 68-74
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/31
    [早期公開] 公開日: 2024/08/12
    ジャーナル フリー

     近年,工学領域を中心に高密度表面筋電図法を用いた非侵襲的な運動単位の解析アルゴリズムの開発が進んでいる。本手法は,単一筋内に60個以上の複数の表面電極を貼付して,筋線維上に伝搬する活動電位波形の解析を行うことで,個々の運動単位の活動のタイミングであるSpike trainを同定することができる。これまで,運動単位の詳細な活動評価には針筋電図法が用いられてきたが,侵襲的な手法であること,サンプリングバイアスが生じやすいこと,運動課題の制約といったデメリットも多く存在している。このような背景から,非侵襲的に運動単位の活動動態を検出することができる高密度表面筋電図法は,運動生理学領域において中枢神経の未知なる制御機構を解明し得る可能性を秘めている。本総説では,これまでに我々が取り組んできた健常者および神経変性疾患における運動単位の活動動態特性について紹介する。

  • 長谷川 直哉
    原稿種別: 総説
    2024 年 27 巻 1 号 p. 75-81
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/31
    [早期公開] 公開日: 2024/08/13
    ジャーナル フリー

     姿勢制御を改善する介入方法として,感覚フィードバック練習が古くから用いられている。感覚フィードバック練習には主として,視覚,聴覚,体性感覚が利用される。しかし,これまでの研究は視覚フィードバック練習に焦点を当てたものがほとんどであり,運動学習に効果的な介入方法はいまだ明らかになっていない。筆者らは随意的な重心移動を伴う姿勢制御課題を用いて,視覚フィードバック練習および聴覚フィードバック練習の学習効果について検証してきた。一連の研究結果から,視覚フィードバック練習は姿勢制御課題の運動学習を阻害する可能性があること,視覚フィードバック練習を用いて学習効果を得るためには視覚フィードバックに何らかの制限を加える必要があること,姿勢制御課題の運動学習において聴覚フィードバック練習が効果的であることが明らかになった。これらの知見は,姿勢制御障害に対する効率的な感覚フィードバック手法の開発に貢献する。

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