抄録
哺乳類の冬眠は低体温を長時間続ける現象と考えられている。そのため,冬眠を人工的に誘導する “人工冬眠”は,人工的に低体温を起こす “人工低体温” としばしば混同される。しかし,冬眠は,内的に制御された生理的調節により可能となる適応現象で,低体温以外にも感染症やがん,種々のストレスからの生体保護が報告されている。これまでの我々の研究から,体内の概年リズムによる心筋細胞のCa2+調節の再調整が見出され,初めての冬眠ホルモン候補として,このリズムに制御されて脳で活性化される冬眠特異的蛋白質(HP)複合体が同定された。冬眠を制御するホルモン性調節を明らかにすることができれば,人工冬眠への扉が開かれるだろう。