社会の超高齢化に伴い,歯科患者が複数の慢性疾患を抱えることが多く,これらの合併症がより重篤化するリスクも高まっている。さらに,歯科特有の局所麻酔薬も,アレルギー反応や中毒を引き起こす可能性だけでなく,含有されているアドレナリンの影響で循環器系へ負担になり心停止となるリスクも高いと考えられる。歯科の環境は特殊であるためインシデントを完全に予防することは難しい。しかし,未だに歯科診療中の急変対応策は明確ではない。今回,現状に則した(A)心停止に対する心肺蘇生CPR,(B)歯科治療中の誤嚥,(C)アナフィラキシーに対する救急処置について解説を加え,指針を示す。今後,歯科環境に適した心肺蘇生法(CPR)や気道閉塞解除を含めた世界規模でのガイドライン等の制定されることが期待される。
30歳台,男性。術後創感染を契機に,TSST-1産生ブドウ球菌による中毒性ショック症候群(TSS)を発症した。嘔気・嘔吐はびまん性紅斑や低血圧に先行した。臨床所見からブドウ球菌性TSSを疑い,緊急に骨内異物除去と創部洗浄による感染源のコントロールを試み,メロペネム,バンコマイシン,クリンダマイシンの投与を開始した。輸液蘇生とノルアドレナリンで循環を維持し,症状は改善した。術後患者が高熱,嘔気・嘔吐,びまん性紅斑,低血圧を呈する場合には,全所見が揃う前や起炎菌同定前であってもブドウ球菌性TSSを想起し,早期の感染源のコントロールと適切な抗菌薬投与を直ちに行うことが重要である。