抄録
5歳, 男児が腹痛を主訴に来院した。胆汁性嘔吐とチアノーゼが続き, ショック状態から心肺停止に陥ったが蘇生に成功した。心拍再開後, 原因検索のため開腹術を施行したが, 腹腔内は副腎に少量の出血を認める以外は異常がなかった。手術終了後も意識は回復せず, 人工呼吸管理とカテコラミンによる循環管理を行った。肝機能および腎機能は低下し, 播種性血管内凝固 (DIC) の所見を示した。入院時の血液検体からA群溶連菌を認めたので, 抗生物質をアンピシリンに変更した。第3病日には意識の回復を認め, 全身状態も改善した。小児が腹痛で来院した場合は劇症型A群溶連菌感染症も念頭に入れて大腿部, 腰部の筋痛や軟部組織の異常にも注意すべきと思われる。