日本鼻科学会会誌
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原著
歯性副鼻腔炎と副鼻腔真菌症の合併例の検討
北村 貴裕
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2017 年 56 巻 4 号 p. 597-601

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抄録

片側性副鼻腔疾患では両側性と比較して,腫瘍性病変の他に歯性副鼻腔炎,副鼻腔真菌症の存在を念頭に置いて,診断・治療にあたる必要がある。歯性副鼻腔炎および副鼻腔真菌症は片側性副鼻腔疾患の鑑別疾患として重要である。時に,歯性副鼻腔炎および副鼻腔真菌症の合併例(以下,本疾患)を経験することがある。抜歯処置後の歯牙からの真菌感染の迷入もしくは歯性の感染と真菌感染の偶発的な合併などによって歯性副鼻腔炎と副鼻腔真菌症が合併することが起こり得る。2015年4月から2016年の3月までに国立病院機構大阪医療センター耳鼻咽喉科・頭頸部外科(以下,当科)で鼻副鼻腔手術を施行した症例のうち,片側性の副鼻腔疾患は23例だった。歯性副鼻腔炎は5例,副鼻腔真菌症は3例だった(重複含む)。本疾患は2例だった。真菌を制御するためには,その除去を行うことが重要なので,本疾患では,内視鏡下鼻副鼻腔手術を主体とする鼻科的治療が重要と思われる。また,診断にはCT,MRIが重要である。歯性副鼻腔炎はCTでは,歯牙から上顎洞への瘻孔もしくは穿通をきたす。また,副鼻腔真菌症はCTでは,真菌塊の存在を示唆するような石灰化を認め,MRI T2強調画像では,低信号域もしくは無信号域を呈する。今回の検討は1年間の内視鏡下鼻副鼻腔手術施行症例中の2例の症例報告であり,感染経路の1つとして抜歯窩の可能性があることと,免疫抑制剤や抗菌薬の長期,多剤使用も一因と考えられる。

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