日本鼻科学会会誌
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最新号
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嗅覚障害診療ガイドライン
原著
  • 杉本 裕梨, 石川 知慧, 竹野 幸夫, 川住 知弘, 竹本 浩太, 堀部 裕一郎, 石野 岳志
    原稿種別: 原著
    2025 年 64 巻 1 号 p. 86-95
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/21
    ジャーナル フリー

    本邦においてアレルギー性鼻炎の有病率は増加傾向であり,その一因には抗原量の増加が指摘されている。一方,2019年12月頃から世界中で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行し,マスクの着用,手洗いうがい,外出控えが促され,生活様式が大きく変化した。我々は,これらの行動様式の変化がアレルゲン感作の程度に関係している可能性について検討した。

    広島大学病院屋上でスギ・ヒノキ花粉の飛散状況を1996年から継続して計測した。また,2015年から2023年に同院を初回受診し,鼻・気道・皮膚症状を有し,原因抗原の検索を目的に血液検査が施行された患者の抗原陽性率(スギ・ヒノキ・ヤケヒョウヒダニ・ハウスダスト)について,COVID-19流行前(2015年–2019年)とCOVID-19流行後1(POST1:2020年–2021年),COVID-19流行後2(POST2:2022年–2023年)に分けて比較検討した。

    その結果,広島県での花粉飛散量は,ヒノキ花粉の増加が顕著であった。また,40–59歳のスギ・ヒノキ花粉抗原に対する陽性率・平均CAPスコアがCOVID-19流行前と比較しCOVID-19流行後(POST1, POST2)において有意に減少した。20–39歳のヤケヒョウヒダニ・ハウスダスト抗原に対する陽性率・平均CAPスコアもCOVID-19流行前と比較しCOVID-19流行後(POST1, POST2)において有意に減少した。一方,0–19歳のダニ抗原陽性率がCOVID-19流行前と比較しPOST2で有意に増加した。

    COVID-19の流行により広く普及したマスクの着用や感染対策,不要不急の外出制限によって抗原への曝露機会が減少し,抗原陽性率やCAPスコアに影響した可能性が示唆された。

  • 千葉 真人, 鈴木 祐輔, 川合 唯, 野内 雄介, 渡邊 千尋, 安孫子 佑子, 伊藤 吏
    原稿種別: 原著
    2025 年 64 巻 1 号 p. 96-101
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/21
    ジャーナル フリー

    IL-4/IL-13のシグナル伝達を阻害する分子標的薬Dupilumabが2019年に重症気管支喘息,2020年には好酸球性鼻副鼻腔炎(ECRS)を含む鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(CRSwNP)の適用を取得し,いずれもその有用性が報告されている。しかしながら,ECRSと気管支喘息は高率に合併する疾患であるにもかかわらず,ECRSに対してDupilumabを開始した症例の喘息を中心とした呼吸症状の変化に関して多くの報告はなされていない。今回我々は2020年7月から2023年4月までにECRSに対して当科でDupilumabを開始し,気管支喘息を合併した17症例に対し,喘息合併の割合や呼吸機能,呼吸器症状の変化について検討を行った。

    喘息治療として,15例は吸入ステロイド薬(ICS)+長時間作動型β2刺激薬(LABA)が,1例でICS単剤が,1例で短時間作動型β2刺激薬(SABA)単剤が使用されていた。喘息治療のコントロール指標である喘息コントロールテスト(ACT)では導入前21.1から導入後6か月で23.5と改善を認めた。また,同テストでコントロール不良とされる20点未満の症例は導入前8症例あったが,導入後4週,24週では認めなかった。呼吸機能検査では1秒量(L)が導入前2.63から導入後6か月で2.93と改善を認めた。本検討により,ECRSに対してDupilumab投与を行った症例では高率に気管支喘息を合併しており,導入により気管支喘息のコントロール状況が改善することが分かった。気管支喘息合併のECRS患者にDupilumabを投与する際には,呼吸機能の改善に伴うQOLの改善が見込めることも強調できると考えられた。

  • 中沢 僚太郎, 上野 貴雄, 吉崎 智一
    原稿種別: 原著
    2025 年 64 巻 1 号 p. 102-107
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/21
    ジャーナル フリー

    金沢大学では,局所進行上顎洞扁平上皮癌に対して手術と並んで超選択的動注化学放射線療法を施行している。2003年から2024年にかけて,初回治療として超選択的動注化学放射線療法を行ったStage III以上の上顎洞扁平上皮癌患者の治療成績をまとめた。

    当院で初回治療として超選択的動注化学放射線療法を施行した上顎洞扁平上皮癌31症例(男性22例,女性9例)を対象とし,Kaplan-Meier法にてStage別5年全生存率,無病生存率,局所制御率の検討を行った。

    Stage別の5年全生存率はStage IIIが78%,Stage IVAが44%,Stage IVBが60%であり,5年無病生存率はStage IIIが70%,Stage IVAが47%,Stage IVBが60%,5年局所制御率はStage IIIが80%,Stage IVAが47%,Stage IVBが60%であった。

    Stage IVAの5年全生存率がStage IVBを下回っており,最も成績が悪かった。シスプラチンの総投与量に応じてlow dose群(600 mg以下)とhigh dose群(750 mg~1,000 mg)に分けて治療成績を解析した結果,high dose群の5年生存率は90%であり,low dose群の48%と比較して良好な成績を示した。従来の文献的報告と比較しても遜色のない結果であった。

    局所進行上顎洞扁平上皮癌に対する超選択的動注化学放射線療法では,シスプラチンの投与量が治療成績に重大な影響を与えることが示唆された。今後も必要十分なシスプラチンの投与量について,症例数や観察期間を増やして検討する必要があると考えられる。

症例報告
  • 増田 守, 池羽 宇宙, 中嶋 海帆子, 森 泰樹, 加納 康太郎, 三澤 清
    原稿種別: 症例報告
    2025 年 64 巻 1 号 p. 108-114
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/21
    ジャーナル フリー

    Glomangiopericytomaは鼻副鼻腔粘膜下に発生するまれな腫瘍であり,2005年のWHO分類で境界悪性から低悪性度腫瘍として分類された。治療は外科的完全切除が求められるが,多血性腫瘍であり術前の血管塞栓術が行われることがある。今回我々は,栄養血管の焼灼により血管塞栓術を行うことなく縮小が得られた症例を経験した。症例は77歳,女性。右鼻出血を主訴に当科受診した。右鼻腔嗅裂部に出血を伴う暗赤色腫瘤を認めた。外来で腫瘍及び周囲粘膜を焼灼し,止血が得られた。同時に施行した生検からglomangiopericytomaの診断となった。その後,2週間ほどで腫瘍は著明に縮小が得られた。全身麻酔下内視鏡下腫瘍摘出術が施行されたが,術中に大きな出血なく腫瘍は摘出された。術後経過は良好で,再発所見なく4ヶ月経過している。Glomangiopericytomaは蝶口蓋動脈領域に好発するため,同部位の栄養血管を焼灼することにより,術中の出血量低下や腫瘍縮小効果が得られる可能性がある。

  • 茂木 英明, 平松 憲, 中川 隆之
    原稿種別: 症例報告
    2025 年 64 巻 1 号 p. 115-122
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/21
    ジャーナル フリー

    症例は53歳男性。過去に受けた鼻中隔矯正術の合併症と考えられる鼻中隔穿孔による鼻呼吸時の笛音と鼻中隔前弯による鼻閉の訴えで受診した。鼻中隔前下方に8 mm,円形の穿孔と,鼻中隔の右への前弯を認めた。残存自己鼻中隔軟骨をバテングラフトとした前弯矯正と穿孔部位鼻腔両側に有茎鼻腔粘膜弁を設け,硬組織を裏打ちとする穿孔閉鎖術を計画した。定型的逆V字切開による鼻柱切開を行うことで,切開部と穿孔縁の距離を十分にとり,両側の鼻中隔粘膜を広く剥離することが可能であった。鼻中隔粘膜剥離および穿孔縁の新鮮化により,鼻中隔穿孔はやや拡大した。加工した篩骨垂直板を支持材料として穿孔の裏打ちとし右鼻腔側に縫着し,同時に右側鼻腔側穿孔を閉鎖した。左側では,後方に茎を有する鼻中隔粘膜弁を穿孔の天蓋側で作製し,鼻腔底側にローテートし,左側穿孔を閉鎖した。鼻中隔前弯は,左側に鼻中隔軟骨によるバテングラフトを縫着し矯正した。術後,鼻中隔穿孔は閉鎖し鼻中隔前弯も改善した。鼻中隔穿孔は鼻科手術の後遺症である場合が多く,粘膜剥離が困難である。周囲の組織を広範囲に適切な層で剥離することにより,残存組織の損傷を防止できる。通常の鼻中隔手術では操作しない鼻中隔前端から鼻中隔皮膚・粘膜の剥離を広範囲に行うことにより,軟骨膜下での穿孔周囲の剥離操作を確実とし,有茎粘膜弁のデザイン,縫合を適切に行うことができた。

日本鼻科学会賞受賞講演
会長講演
Presidential lectures of KRS and TRS
日韓台シンポジウム(JKT symposium)
International session 1
International session 2
特別企画:鼻科手術指導医の現況-意義と問題点-
特別講演
教育講演 [専門医共通講習]
パネルディスカッション1:IgG4関連疾患に伴う慢性鼻副鼻腔炎はIgG4-RDか?[専門医領域講習]
パネルディスカッション2:歯性上顎洞炎に対する治療および医療連携—耳鼻咽喉科と歯科の連携は,どのように行うのが最適なのか?—[専門医領域講習]
シンポジウム1:炎症細胞のトピックス[専門医領域講習]
シンポジウム2:嗅覚に関する新知見[専門医領域講習]
シンポジウム3:国家戦略に沿った花粉症と喘息への対策[専門医領域講習]
シンポジウム4:内視鏡下鼻副鼻腔手術—前頭洞病変の治療戦略—[専門医領域講習]
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