日本鼻科学会会誌
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総説
  • 山住 彩織, 竹内 直子, 森山 壮, 大谷 晃嗣, 由井 亮輔, 中山 栞奈, 油布 一貴, 濱崎 与, 森 恵莉, 鴻 信義, 宮脇 剛 ...
    原稿種別: 総説
    2026 年65 巻1 号 p. 1-9
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/28
    ジャーナル フリー

    鼻中隔外鼻形成術は,鼻閉と外鼻変形の双方に対して機能的かつ整容的にアプローチ可能な術式であり,東京慈恵会医科大学附属病院では2005年より耳鼻咽喉・頭頸部外科と形成外科の合同手術として実施してきた。2024年に保険収載されたことで,今後の需要拡大が予想される。本稿では,当施設のデータを参考として診療連携,手術計画,術後管理,教育面を概説する。2015年から2024年に施行したOSRP 816例の分析では,再手術例は18例(2.2%)であった。2024年の165例における平均在院日数は4.3日,平均手術時間は201.6分であった。また,2022年に導入した主観的評価指標J-SCHNOSを用いて術前・術後1年のスコアを検討した100例では,機能・整容の両側面で有意な改善を示した。気胸など肋軟骨採取に伴う合併症に対しては術中の工夫と管理体制の強化が重要である。

    2診療科の連携の工夫として,外来では主訴・画像・身体所見に基づく相互紹介による適応の決定,手術時間,手術枠と入院主科の調整を標準化している。また,外切開を用いた本術式は明瞭な術野展開から教育的観点でも有用であり,形成外科では7年目以降の医師を対象に執刀を開始し,耳鼻咽喉・頭頸部外科医も希望があればオープンアプローチ等の習得が可能となっている。今後は診療体制と運用面の更なる整備を進め,より安全かつ有効な術式として普及が期待される。

原著
  • 中阿地 啓悟, 松根 彰志, 臼倉 典宏, 細矢 慶, 小町 太郎, 大久保 公裕, 後藤 穣
    原稿種別: 原著
    2026 年65 巻1 号 p. 10-18
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/28
    ジャーナル フリー

    はじめに:好酸球性鼻副鼻腔炎(eosinophilic chronic rhinosinusitis; ECRS)に対して2020年にdupilumab(DPM),2024年にはmepolizumabも適応となった。これまで当科ではバイオマーカーとして血中の血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor; VEGF)の有用性を報告してきた。今回はより長い期間でDPMによる治療例でのVEGFの変化とSNOT-22との関連を中心に検討した。

    対象:2020年10月から2023年3月の期間に当科でDPMを開始したECRSの症例18例(男性8例,女性10例 35歳~79歳,中央値55歳)を対象とした。評価項目は,SNOT-22,末梢血好酸球比率(%),末梢血好酸球数(/μL),末梢血総IgE値(IU/mL),末梢血中VEGF値(pg/mL)を用いた。

    結果:VEGFはDPM投与後12ヶ月の時点で有意に低下を認めた(p<0.01)。SNOT-22の合計点は投与時から6ヶ月で有意な低下を認め,その後も改善は維持された。(p<0.01)。SNOT-22を鼻症状,周辺症状,睡眠症状,精神症状のサブグループに分け,それぞれについて検討した。鼻症状,周辺症状,睡眠症状,精神症状は投与後6ヶ月で有意に低下を認めた(鼻症状:p<0.01,周辺症状:p<0.05,睡眠症状:p<0.01,精神症状:p<0.01)。末梢血好酸球比率,好酸球数はそれぞれ投与開始時から投与開始後3ヶ月で有意な上昇を認め,投与後12ヶ月で投与開始時と同等の水準まで低下した(各p<0.05)。末梢血総IgE値は,投与開始後6ヶ月で有意に低下した(p<0.05)。

    結語:VEGFはdupilumab投与により12ヶ月で有意に減少し,長期的な指標になる可能性を示した。

  • 室野 重之, 橋本 千織, 尾股 千里, 垣野内 景, 工藤 美菜, 久保田 叡
    原稿種別: 原著
    2026 年65 巻1 号 p. 19-26
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/28
    ジャーナル フリー

    日本人の10歳代から50歳代のスギ花粉症有病率は50%に迫り,セルフケアやメディカルケアのためにはスギ花粉の飛散予測が重要となる。われわれは2019年より,福島市のスギ花粉飛散開始日を,基準温度を0°C,起算日を1月21日とする有効積算温度により,またX年の総飛散数を,X−1年7月の気象データ(平均気温,日照時間,降水量)とX−1年シーズンの総飛散数をもとに独自に予想してきた。しかし自施設でダーラム型による花粉数の測定を行っておらず,データ利用の持続性の点から,隣接する二本松市の気象および総飛散数のデータを用いることで福島市の飛散開始日と総飛散数を予測する試みをした。

    過去25年の平均から福島市は二本松市より飛散開始日が1日早い。したがって,過去の二本松市の飛散開始日の1日前までの,基準温度を0°C,起算日を1月21日とした有効積算温度を求めることにより,二本松市の気象データによる福島市の飛散開始日を予測するモデルを見出した。予測と実測との平均誤差は3.48日であった。また,二本松市のX−1年7月の気象データとX−1年シーズンの総飛散数を用いて,X年の福島市の総飛散数を従属変数とする重回帰分析により福島市の総飛散数を予測する式を見出し,その決定係数は0.494であった。地域に精通した機関が独自に予測することも意義のあることと考えている。

  • 鈴木 智陽, 小宗 徳孝, 樋口 良太, 宮本 雄介, 齋藤 雄一, 村上 大輔, 中川 尚志
    原稿種別: 原著
    2026 年65 巻1 号 p. 27-33
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/28
    ジャーナル フリー

    はじめに:内視鏡下経鼻頭蓋底手術は現在広く普及しており,下垂体腫瘍手術に対しても多く行われている。これまでの報告の中には,成長ホルモン産生下垂体腺腫(Growth Hormone-secreting pituitary neuroendocrine tumor(GHoma))患者とその他の下垂体神経内分泌腫瘍(pituitary neuroendocrine tumor(PitNET))患者との間に解剖学的差異があるとするものもあるが,鼻腔形態や蝶形骨洞の構造,頭蓋底周囲の血管走行の違いに焦点を当てた研究は限られている。

    対象と方法:2018年8月から2024年4月にかけて九州大学病院で内視鏡下経鼻的下垂体手術を施行したGHoma 28例およびnon-GHoma PitNET 104例を後方視的に解析した。術前CT画像を用い,Haller cell,中鼻甲介蜂巣の有無,蝶形骨洞前壁の分類,前・後篩骨動脈のfloatingの有無を評価した。統計解析にはJMP Pro 18®,Prism 10,Stataを用い,p<0.05を有意差ありとした。

    結果:Haller cellおよび中鼻甲介蜂巣の有無,蝶形骨洞前壁の分類に関して,GHoma群とnon-GHoma PitNET群の間に有意差は認められなかった。後篩骨動脈のfloatingはGHoma群で高い傾向を示したが有意差はなく,一方で前篩骨動脈のfloatingはGHoma群で有意に多かった。

    結論:GHoma群では前篩骨動脈のfloatingの頻度が高く,後篩骨動脈も多い傾向を示したが,その他の副鼻腔や蝶形骨洞の形態的変異に有意差はなかった。GHoma症例では,術前に血管走行の精査を行い,安全な手術計画を立てることが重要である。

  • 平野 康次郎, 岡野 光博, 都築 建三, 薮田 忠孝, 内村 ひとみ, 三木 崇, 鴻 信義
    原稿種別: 原著
    2026 年65 巻1 号 p. 34-42
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/28
    ジャーナル フリー

    好酸球性鼻副鼻腔炎(ECRS)は難治性の慢性鼻副鼻腔炎であり,鼻汁,鼻閉,嗅覚障害などの症状を伴い,生活の質(QOL)を低下させる。本調査では,全国の指定難病認定ECRS患者を対象に,実臨床下での生物学的製剤を含む治療に対する満足度の評価と,治療改善につながる因子の探索を目的とした。2024年12月から2025年1月にかけて,アンケート調査を実施し,150例の回答を分析した。生物学的製剤で治療中の患者(Bio使用群)は77例(51.3%),生物学的製剤で治療中ではない患者(Bio非使用群)は73例(48.7%)であり,患者背景は両群で大きな違いはみられなかった。現在の治療満足度(「おおむね満足」「満足」と回答した割合)は全体集団で61.3%,Bio使用群68.8%,Bio非使用群53.4%であり,Bio使用群でも約3割は満足していなかった。Bio使用群におけるSNOT-22スコアの中央値は17.0であった。Bio使用群のうち,現在の治療に満足している患者がさらに望む治療の改善点は「治療費の軽減」「効果の持続」などであった。Bio使用群の54.5%はECRS症状の悪化因子を複数有し,短期間の経口ステロイド薬の使用が51.9%で認められた。ECRS患者の治療満足度を向上させるには,生物学的製剤の適切な使用やECRS症状の悪化因子に応じた対処が求められる。

症例報告
  • 鄭 裕華, 平野 康次郎, 手口 翔太, 依田 俊也, 洲崎 勲夫, 浜崎 泰佑, 嶋根 俊和
    原稿種別: 症例報告
    2026 年65 巻1 号 p. 43-48
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/28
    ジャーナル フリー

    手術手技や光学機器の進歩により,経鼻的アプローチによる頭蓋底手術が増加している。経鼻腔的にアプローチ可能な範囲が広がる一方で,予期せぬ合併症の発生もある。今回,術中に形成された鼻腔口蓋瘻孔に対し,即時再建を行った症例を経験したため文献的考察と共に報告する。症例は下垂体神経内分泌腫瘍による先端巨大症の42歳女性。経鼻内視鏡下頭蓋底手術により口蓋瘻孔が生じたため再建目的に術中に当科に依頼があった。内視鏡下に鼻腔底を観察したところ,鼻腔底に7×15 mm大の瘻孔を認めた。下鼻甲介骨を採取,形成し鼻腔側より瘻孔部を塞ぐように挿入し硬性再建を行い,鼻中隔有茎粘膜弁で被覆した。骨露出部には下鼻甲介粘膜を遊離粘膜弁として用いて被覆し,口腔側からは口蓋粘骨膜弁を用いて閉鎖した。術後経過は良好で,術後3か月で上皮化を確認し,術後2年経過時点で再発はない。本症例は,口腔側から口蓋粘骨膜弁で閉鎖するだけでなく,同時に鼻腔側より下鼻甲介骨を用いた硬性再建と有茎粘膜弁を用いた再建を行った。口蓋瘻孔は食事や発声による圧がかかり舌による刺激を受けるため瘻孔の閉鎖には難渋することもある。本症例は,鼻腔側より組織を充填し,口腔からも粘膜弁で再建を行い鼻腔側・口腔側の両面から瘻孔を閉鎖するサンドイッチアプローチを用いたことが良好な結果につながったと考える。

  • 吉田 重和, 矢富 正徳, 丸山 諒, 桑澤 徹, 持田 峻, 蔡 佳穎, 塚原 清彰
    原稿種別: 症例報告
    2026 年65 巻1 号 p. 49-54
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/28
    ジャーナル フリー

    先天性鼻涙管閉塞は,新生児の6–20%に発症する頻度の高い疾患である。多くは膜性閉塞であり自然治癒する可能性が高いため,基本的にはまず保存的治療を行う。しかし,骨性鼻涙管閉塞は,自然治癒が期待できないため観血的治療を考慮する必要がある。今回,先天性骨性鼻涙管閉塞に対して内視鏡下涙嚢鼻腔吻合術(DCR)を施行した小児の1例を経験したため文献的考察を加えて報告する。症例は7歳の男児である。口唇裂に対して形成手術の既往があった。2歳時から右涙嚢炎を反復しており,CT検査で右鼻涙管の骨性閉塞を認め,先天性骨性鼻涙管閉塞と診断した。保存的治療で症状は改善せず,鼻内法によるDCRを施行した。術後2年が経過した現在も再閉塞は認めておらず,外来で経過観察中である。口唇口蓋裂のような顔面奇形に伴う先天性鼻涙管閉塞は,骨性閉塞を呈している可能性がある。骨性閉塞は稀ではあるが,診断時からDCRの適応となる。小児に対するDCRは,ワーキングスペースが狭いことや危険部位との距離が近いといった小児特有の問題がある。また,先天性頭蓋顔面異常または症候群を伴う小児に対するDCRは,鼻腔の解剖学的異常と狭小化により治癒率が低くなるとの報告もある。小児に対するDCRは,長期的な治療成績に関する報告が限られており,今後は症例を蓄積することで,その安全性および有効性に関するエビデンスを確立していく必要がある。

  • 中牟田 航希, 坂東 伸幸, 荒木 大輔, 林 美咲, 有馬 涼太, 後藤 孝, 髙原 幹
    原稿種別: 症例報告
    2026 年65 巻1 号 p. 55-61
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/04/28
    ジャーナル フリー

    形質細胞腫は,B細胞の最終分化形態である形質細胞がモノクローナル性に増殖し,骨または髄外組織に局所的に発生する腫瘍性疾患である。髄外性形質細胞腫は骨髄以外の組織に発生する形質細胞腫で,頭頸部領域に好発することが知られている。症例は84歳女性。左鼻閉,左鼻出血を主訴とし,当科へ紹介となった。左鼻腔内には面平滑でやや赤い腫瘤が充満しており,副鼻腔CTで左下鼻甲介前3分の2が腫瘍におきかわっていた。生検の結果,IgA-κ型の形質細胞腫の診断となった。全身麻酔下にEndoscopic medial maxillectomyに準じて腫瘍を全摘した。血清M蛋白認めず,尿中Bence Jones蛋白は陰性,FDG-PET/CTで四肢,体幹,頸部に集積認めず,髄外性形質細胞腫と診断した。前方断端陽性であったため,局所に50 Gyの術後照射を施行した。治療後1年経過するが,再発なく経過観察中である。髄外性形質細胞腫は数年以上経過した後に多発性骨髄腫へ移行する可能性があると報告されており,長期にわたり厳重な経過観察が必要と思われる。

日本鼻科学会賞受賞講演
会長講演
理事長講演
Presidential lectures of KRS and TRS
日韓台シンポジウム(JKT symposium)
International session 1
International session 2
招待講演1
招待講演2
教育講演
特別講演[専門医共通講習(地域医療)]
パネルディスカッション1:ESSの周術期管理
パネルディスカッション2:嗅覚障害の評価をアップデート
パネルディスカッション3:緊急症例さあどうする
シンポジウム1:改めて考える難治性アレルギー性鼻炎の治療戦略
シンポジウム2:好酸球性副鼻腔炎の難治化メカニズムを紐解く
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