日本鼻科学会会誌
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追悼文
報告
  • 2019 年 58 巻 2 号 p. 151
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー
  • 熊井 琢美, 尹 泰貴, 青井 典明, 前田 陽平, 林 隆介, 長門 利純, 鈴木 健介, 澤田 俊輔, 武田 和也, 津田 武, 岩井 ...
    2019 年 58 巻 2 号 p. 152-158
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー

    日本鼻科学会では,2014年より学会主導による『鼻科基礎ハンズオンセミナー』を開催している。これは,耳鼻咽喉科臨床医の基礎研究に対するモチベーションや研究技術の向上,ひいては各大学間の研究を通じた横断的連携を図る目的で企画された。幸いなことに本セミナーへの期待度は非常に高く,セミナー後のアンケート調査ではこれまで継続を希望する意見が多数であった。今回で5回目となる本セミナーを第57回日本鼻科学会総会・学術講演会(旭川)において企画した。今年度は①鼻・副鼻腔サンプルからの細胞単離および,mRNA抽出,②ELISA,③Western Blot,そして④CRISPER-Cas9の4テーマをそれぞれのブースで実演する形式とし,セミナー終了後に参加者にアンケート調査を実施した。全回答者から「大変良かった」または「良かった」という高評価を得ており,96%の参加者より「今後の継続を望む」という意見を得ている。今回,多数の大学院生や大学スタッフが参加しており,本邦から発信する基礎鼻科学の新知見に直結する有意義なセミナーと考えられた。

原著
  • 赤澤 仁司, 前田 陽平, 津田 武, 端山 昌樹, 識名 崇, 猪原 秀典
    2019 年 58 巻 2 号 p. 159-166
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:基準嗅力検査で認知域値を測定する際,認知したにおいを表現しにくい場合はにおい語表を用いると回答しやすくなるが,その分だけ検査上の認知域値が良くなる可能性がある。そこで今回我々はにおい語表の使用群・非使用群の認知域値について検討したので,報告する。

    対象・方法:対象は2016年4月から2017年5月までに市立池田病院で基準嗅力検査を受け,日常のにおいアンケート(以下,SAOQ)にも回答した60例とした。当院で基準嗅力検査を行った時期により,におい語表非使用群(2016年4月から2016年10月)と使用群(2016年11月から2017年5月)に分け,基準嗅力検査の認知域値・検知域値・認知検知域値差および静脈性嗅覚検査・SAOQの結果を後ろ向きに比較検討した。

    結果:使用群は37例で非使用群は23例であった。認知域値は使用群が有意に低値であった(p=0.003)。認知検知域値差は使用群で有意に低値であった(p=0.048)。検知域値は両群間に有意な差は認めず,SAOQスコアも両群間に有意な差は認めなかった。

    におい語表を用いると非使用時に比べて,嗅覚障害の程度が同程度でも認知域値が良くなる可能性があると考えられた。

    結論:におい語表使用の有無は平均認知域値に影響を与える因子であると考えられた。基準嗅力検査時にはにおい語表使用の有無を統一する必要がある。

  • 佐藤 由紀, 鈴木 康弘, 稲葉 雄一郎, 堤 剛
    2019 年 58 巻 2 号 p. 167-174
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー

    蝶形骨洞内単独病変は,日常診療で画像検索を行うと,頻度は多くないものの散見される。蝶形骨洞はその解剖学的位置関係から,後鼻漏や慢性咳嗽といった症状だけでなく,視力障害や眼球運動障害といった眼合併症や頭蓋内への進展に伴った様々な合併症が生じる可能性がある。このため,画像だけで確定診断が困難な場合は,内視鏡手術で生検や試験的開放を行って,早期に診断をつける必要がある。今回我々は,画像で悪性の可能性が否定できないため,内視鏡手術を施行し,異所性下垂体腺腫の確定診断となった症例を経験した。また破壊型真菌症が疑われたため緊急手術を行ったが,病理診断では炎症のみであった症例も経験した。これらの症例の経験を今後の日常診療に生かすべく,蝶形骨洞内単独病変症例について検討を行ったので報告する。

  • 堀切 教平, 山村 晃司, 北原 伸郎, 古川 麻世, 安原 一夫
    2019 年 58 巻 2 号 p. 175-179
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー

    銃弾やナイフ以外の頭蓋内穿通外傷は稀な疾患である。経口腔的にボールペンを刺入し,トルコ鞍から頭蓋内へと穿通した一例を経験したので報告する。症例は57歳男性で,統合失調症で他院に入院していた。自殺を企図し,歯ブラシやボールペンを口腔内に突き刺しているのが目撃された。その後の患者の様子は変わらなかったが,CT検査にてトルコ鞍骨折と気脳症,さらに蝶形骨洞にらせん状の金属異物を指摘され当院脳神経外科に転院搬送となった。同日より抗菌薬の投与が開始され,入院2日目に当科への診察依頼があった。診察時は硬口蓋から軟口蓋にかけての粘膜裂傷と,左鼻腔内にスプリングを認めた。意識状態は受傷前と変化なく,神経学的異常所見や眼球運動障害,鼻漏,頭痛といった症状はみられなかった。鼻腔内のスプリングを除去したが髄液の漏出はなかった。当院で施行したCTでは左蝶形骨洞に円筒状の高吸収域を認め,口金の蝶形骨洞内遺残が考えられた。感染源となり得るため,全身麻酔下で異物除去術を施行した。術後は大きな合併症なく搬送元に転院となった。頭蓋内へは,眼窩,鼻腔といった比較的骨の薄い箇所は穿通しやすい。受傷後に軽微な症状で経過していても,髄膜炎や脳膿瘍といった合併症を併発し予後不良となることもある。十分な画像精査と慎重な経過観察は不可欠であり,遺残のないことも確認することが重要である。

  • 大國 毅, 関 伸彦, 山本 圭佑, 高野 賢一
    2019 年 58 巻 2 号 p. 180-186
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー

    特発性髄液鼻漏は,明らかな誘因なく頭蓋底・硬膜の一部に欠損を生じ頭蓋内と鼻副鼻腔が交通,脳脊髄液が漏出する病態である。特発性髄液鼻漏の主な症状は一側性水様性鼻漏と頭痛を反復することであり,耳鼻咽喉科を受診することが多い。一般的に特発性髄液鼻漏では,肥満を伴う女性,特発性頭蓋内圧亢進症の併発例が多いとされる。気脳症や重篤な化膿性髄膜炎を発症するリスクがあり,早期診断・治療が求められる疾患である。

    特発性髄液鼻漏では頭蓋底欠損部が自然閉鎖することは稀であり,外科的に瘻孔を閉鎖する必要がある。近年では,低侵襲でありかつ80~90%の閉鎖率と報告される経鼻アプローチ法による瘻孔閉鎖術を選択されることが多い。確実な頭蓋底再建を行うためには,術前画像検査にて瘻孔部位およびサイズを把握し,適切な再建材料,術式を選択することが肝要である。

    今回われわれは,CT検査で明らかな骨欠損を認めない嗅裂部特発性髄液鼻漏例に対し,MR cisternography検査で部位診断を行い,また経鼻アプローチで多重閉鎖術による頭蓋底再建を施行し良好な経過が得られた症例を経験したので報告する。

  • 中西 わか子, 内山 美智子, 高岡 美渚季, 川脇 和世, 物部 寛子
    2019 年 58 巻 2 号 p. 187-195
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー

    IgG4関連疾患は全身臓器や器官にIgG4陽性リンパ形質細胞浸潤による病変がみられる一連の病態で,その中には比較的稀であるが眼疾患,副鼻腔疾患も含まれる。今回眼科より精査を依頼され,両科で診断に苦慮し,当科で生検を施行したIgG4関連眼疾患2症例を経験したので報告する。

    症例1 60歳男性。主訴は右視力低下,右眼球突出。副鼻腔CT,MRIでは両側の汎副鼻腔炎と,両側内下直筋の腫脹を認めた。右視神経炎による視力障害が進行し,緊急にプレドニゾロン(PSL)20mgの内服が開始された。1週後にESSを施行したがすでに副鼻腔粘膜は正常化していた。その後PSLの減量とともに視力悪化,眼球突出が再燃し,PSLの投与が反復された。数回の副鼻腔粘膜の生検を行ったが炎症所見は乏しく病理学的確定診断は得られなかった。血清IgG4を測定すると264mg/dlと上昇を認め,臨床経過からIgG4関連眼疾患,視神経炎として長期的なPSLの投与を再開し,症状のコントロールを得た。

    症例2 44歳男性。主訴は左眼球突出,複視。副鼻腔CT,MRIにて外眼筋肥大,左優位の両側三叉神経第2枝腫瘤,さらに両側軽度の涙腺腫脹を認めた。血清IgG4は864mg/dlと高値。確定診断目的で左上顎洞根本手術による腫瘤切除術を施行した。病理診断でIgG4関連疾患の診断に至った。ステロイドの内服治療により良好な経過を経ている。

  • 服部 貴好, 石橋 卓弥, 高原 大輔, 石野 岳志, 竹野 幸夫
    2019 年 58 巻 2 号 p. 196-202
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー

    嗅覚障害診療ガイドラインが発刊され,嗅覚障害に対する概念や分類,原因,診断,治療に対する知識が広がりつつある。今回我々は,鼻腔所見から原因不明の嗅覚障害が疑われたものの,鼻腔CTにて上鼻甲介の内反による嗅裂閉鎖が原因であると診断できた気導性嗅覚障害例を経験した。症例1は24歳の女性。基礎疾患にアレルギー性鼻炎があり,CTにて上鼻甲介の内反による嗅裂閉鎖を認め,鼻処置にて同部位を開大すると嗅覚の改善が得られた。症例2は50歳の女性。好酸球性副鼻腔炎に対し他院にて手術を施行されていたが,術後の嗅覚は不安定で高度の変動を認めた。CTにて上鼻甲介の内反による嗅裂閉鎖を認め,嗅裂の状態で嗅覚の変動が認められた。症例3は17歳の男性。基礎疾患に慢性副鼻腔炎があり,近医耳鼻咽喉科を不定期受診していたが嗅覚は改善しなかった。CTにて上鼻甲介の内反による嗅裂閉鎖を認め,嗅裂の形態改善目的で中鼻甲介開窓術を行い嗅覚の改善が得られた。3症例はともに鼻腔CTで,上鼻甲介レベルの嗅裂の狭小化を認め,両側の上鼻甲介がそれぞれ鼻中隔側に向かって内反して閉塞した所見を認めた。本所見を基に同部位の開大を行ったところ全例において嗅覚の改善が得られたため,これら症例においては嗅裂の形態が病態形成の主要な要因であると考えられた。本病態においては鼻腔CTによる嗅裂形態の確認が重要であるとともに,恒久的な構造の改善のために内視鏡下鼻内副鼻腔手術による中鼻甲介開窓術が有効であると考えられた。

  • 森下 裕之
    2019 年 58 巻 2 号 p. 203-208
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー

    片側性副鼻腔疾患では両側性と比較して,副鼻腔炎以外にも真菌症や腫瘍などを考慮する必要があり,これらの確定診断には手術を要することも多く,より正確な術前診断が求められる。今回,これらの疾患の割合や診断に有用な検査および所見を明確化することを目的として,片側性副鼻腔疾患の手術例での各疾患の統計および術前検査の有用性について検討を行った。2013年1月から2017年12月の5年間に,当院にて片側性副鼻腔疾患に対して手術を施行した症例のうち,術後性嚢胞を除外したものを対象とした。検討項目は年齢,性別,症状,CT所見,MRI所見,術前生検結果,術前診断・術後診断およびその一致率として後ろ向きに検討した。結果として,145症例が対象となり,内訳は慢性非浸潤性副鼻腔真菌症が最も多く54例,ついで慢性副鼻腔炎42例,副鼻腔乳頭腫24例,歯性副鼻腔炎12例,扁平上皮癌3例,原発性嚢胞2例,急性浸潤性副鼻腔真菌症2例であり,その他の疾患が1例ずつ存在した。各疾患の診断において上記項目を検討したところ,慢性副鼻腔炎,副鼻腔乳頭腫,副鼻腔真菌症,悪性腫瘍など,歯性副鼻腔炎を除く多くの疾患の術前診断でMRIが有用であった。結論として,片側性副鼻腔疾患の診断にはMRIが有用であり,CTでは診断が困難な症例には積極的に検討すべきと考える。

  • 成尾 一彦, 阪上 剛, 山下 哲範, 蓮川 昭仁, 北原 糺
    2019 年 58 巻 2 号 p. 209-219
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー

    糖尿病を合併する67歳男性で,2か月前からの複視があり,視力低下も伴い,病変が左上顎洞から篩骨洞,翼口蓋窩,左眼窩内,海綿静脈洞にまで進展しており,初診8日後に鼻内視鏡手術を施行,アスペルギルスによる浸潤型副鼻腔真菌症と診断し,抗真菌薬ボリコナゾール投与と血糖コントロールを行い,視力や眼球運動も完全回復した症例を経験した。

    2010年以降本邦で報告された浸潤型副鼻腔真菌症例37例を検討した(本例を含む)。罹患部位では37例中28例(75.7%)に視力障害に直結する後篩骨洞と蝶形骨洞に病変が及んでいた。視力低下26例(70.3%),眼球運動障害(複視)21例(56.8%)にみられ,眼窩内進展28例(75.7%),頭蓋内進展は17例(45.9%)にみられた。治療は33例(89.2%)に抗真菌薬ボリコナゾールが使用され,鼻内視鏡手術が32例(86.5%)に選択されていた。生存30例(81.1%),死亡7例(18.9%)で,生命予後に有意であった因子は,単変量解析で糖尿病(P=0.037),頭蓋内進展(P=0.026)であった。視力低下も含め,多変量解析すると,頭蓋内進展が生命予後を規定していた(オッズ比11.5,95%信頼区間1.03~128.0,P=0.047)。視機能については,視力は治療前失明しているものは改善したものはなく,0.01以上の視力があれば1例を除く83.3%の症例で視力は改善した。眼球運動障害は76.5%の症例で改善していた。

  • 横井 慶, 前田 陽平, 端山 昌樹, 平井 崇士, 武田 和也, 津田 武, 赤澤 仁司, 猪原 秀典
    2019 年 58 巻 2 号 p. 220-228
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー

    Wormaldらが‘Building block concept’を提唱後,成書や総説においてもそれを踏まえた記載が増えてきたが,本邦において,依然として前頭洞が術者にとって最も難しいと考えられているかは不明である。また,Draf type IIIなどの内視鏡下拡大前頭洞手術やEndoscopic medial maxillectomy/Endoscopic modified medial maxillectomyなどの発展的な上顎洞内視鏡手術も広がってきているが,その普及度についての知見は乏しい。

    そこで,今回我々は大阪大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科関連病院勤務医120名を対象に匿名で前頭洞手術・上顎洞手術に関するアンケート調査を行い,71名(59%)より有効な回答が得られた。

    結果,過去の報告と同様,前頭洞については他の副鼻腔と比較して開放は困難と考えられていた。内視鏡下拡大前頭洞手術については,自力で施行できる医師の割合は少数(8%)であり,自施設で内視鏡下拡大前頭洞手術を施行していない理由としては施行可能な医師がいないことを理由に挙げた医師が多かった。Endoscopic medial maxillectomy/Endoscopic modified medial maxillectomyについては拡大前頭洞手術と比較すると比較的普及していた(26%)。

    内視鏡下拡大前頭洞手術・Endoscopic medial maxillectomy/Endoscopic modified medial maxillectomyのいずれについても,未習得の医師の状況においては「習得したいが教えてもらえる環境ではない」という回答が最も多かった(それぞれ48%,50%)。これらの手術の習得のためには解剖実習などへの参加を勧める,あるいは指導可能な医師を招聘する体制を整えるなどの対策が必要であると考える。

  • 中井 義紀, 家根 旦有
    2019 年 58 巻 2 号 p. 229-235
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー

    線維性骨異形成症(Fibrous dysplasia: FD)は,大きく単骨性線維性骨異形成症(monostotic type)と多骨性線維性骨異形成症(polystotic type)に分類される。単骨性が多骨性の4倍の頻度とされ顔面骨に生じることが最も多い。今回我々は小児の線維性骨異形成症を2例経験したので報告を行う。症例1)10歳男児,頭痛のためMRIを撮影したところ左上顎に腫瘍を指摘され当院を受診。左頬部に軽度の腫脹を認める以外には有意な所見は認めなかった。副鼻腔CTでは左上顎洞下・外側壁にスリガラス状の骨肥厚を認めた。確定診断のために全身麻酔下で頬部より組織を採取し病理組織検査を行ったところFDと診断された。骨シンチでは上顎以外には集積を認めなかったため顔面骨領域での単骨性線維性骨異形成症の診断に至った。症例2)12歳男児,近医において副鼻腔X-Pの撮影を行ったところ左上顎骨肥厚を指摘され当院を受診した。症例1と同様に左頬部腫脹を認める以外の所見は認めなかった。副鼻腔CTでは頭蓋底~左顔面・下顎にスリガラス様の骨肥厚を認めた。骨シンチにおいてはCTの骨肥厚部に一致した集積を認めたが他の部位には集積は認めなかった。全身麻酔下で組織採取病理検を行った病理検査結果はFDであったため多骨性線維性骨異形成症の診断に至った。

    両症例とも頬部腫脹以外の所見は認めず術後も骨肥厚の増大は認めていないため経過観察中である。

  • 國井 直樹, 鈴木 和男, 飯沼 智久, 大塚 雄一郎, 山﨑 一樹, 櫻井 大樹, 花澤 豊行, 岡本 美孝
    2019 年 58 巻 2 号 p. 236-242
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー

    多発血管炎性肉芽腫症(GPA)は主に上・下気道や腎の小型血管を障害する壊死性肉芽腫性炎症であり,抗好中球細胞質抗体(ANCA)が陽性になることが知られている。しかし,病変が上気道に限局した早期のGPAでは検査上ANCAが陽性を示さず,生検検体でも主要組織所見を確認できないことが多い。そのため早期には診断に至らず治療前に病勢が進行する症例が少なくない。

    ANCAの一つである抗moesin抗体は,抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体(MPO-ANCA)関連血管炎患者の一部で陽性となり,腎障害および全身の炎症を反映する可能性が示唆されている。今回,GPAが強く疑われるが診断基準を満たさず,約2年間の経過で病勢が進行した上気道限局型肉芽腫性炎症の患者において,抗moesin抗体を測定したところ高値を示した。この患者に対し,鑑別すべき疾患の除外を行った上で,プレドニゾロンとシクロフォスファミドを用いたGPAに対する寛解導入療法を行ったところ,速やかに鼻内の肉芽腫は消失し,寛解と判断され,その後の維持療法でも再燃を認めなかった。寛解導入療法後に血清中の抗moesin抗体価は陰転化し,再上昇も認めなかった。

    今後,更なる臨床的検討が必要ではあるが,抗moesin抗体価がGPAの診断,病態マーカーとして有用になる可能性があると考えられた。

  • 梅本 真吾, 立山 香織, 渡辺 哲生, 平野 隆, 鈴木 正志
    2019 年 58 巻 2 号 p. 243-249
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー

    1996年1月1日から2017年4月30日までの21年4ヶ月間に,大分大学医学部耳鼻咽喉科にて入院加療を行った鼻出血症例について検討した。該当する症例は206例(男性141例,女性65例)で平均年齢は62.6歳であった。また冬季から春季に多く,夏季には少ない傾向にあり,103例(50.0%)が時間外の受診であった。

    何らかの基礎疾患を有する症例は137例(66.5%)であり,高血圧が96例(46.6%)で最多であった。また易出血性薬剤内服症例を42例(20.4%)に認めた。出血部位は,不明であったものが58例(27.2%),出血点が判明したものの中では鼻腔後方が最多で57例(26.8%)存在した。

    治療法は主にガーゼパッキングや電気凝固が用いられているが,近年は,電気凝固,蝶口蓋動脈切断術を施行する症例が増加する傾向にあり,ベロックタンポンやバルーンを施行する症例は減少する傾向にあった。治療法変遷の要因としては,近年硬性内視鏡の発達に伴い鼻腔後方の出血においても的確な処置が可能となったことが考えられる。

    入院加療後の再出血症例は30例(14.6%)であり,そのうち17例(56.7%)の症例で入院時に出血点が不明であるか,出血点を誤認していた。再出血例では出血点の誤認が原因となり得るため,必要に応じて硬性内視鏡を用い,出血点を確実に同定した上で明視下止血処置を行うことが重要と考えられる。

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