骨破壊を伴う鼻副鼻腔疾患の鑑別としては,浸潤性副鼻腔真菌症,アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎(AFRS:Allergic fungal rhinosinusitis),鼻副鼻腔悪性腫瘍などが挙げられる。
今回我々は,斜台部骨欠損を認め,両側外転神経麻痺を来したAFRSの1症例を経験した。症例は4年前より慢性副鼻腔炎に対して内服加療歴のある29歳女性。運転中に複視を自覚し,眼科で両側外転神経麻痺を指摘された。CTでは左上顎洞篩骨洞蝶形骨洞,右蝶形骨洞に軟部陰影を認め,斜台後壁の骨は広範に欠損していた。内視鏡下鼻副鼻腔手術を施行し,術後2日目に複視の自覚は改善した。蝶形骨洞後壁から斜台の骨欠損が広範であったため,斜台後方を走行する両側の外転神経が,橋前面から海綿静脈洞内に入るところで障害を受け,両側外転神経麻痺の症状が生じたと考えられた。