日本鼻科学会会誌
Online ISSN : 1883-7077
Print ISSN : 0910-9153
ISSN-L : 0910-9153
総説
耳鼻咽喉科・頭頸部外科医が恐れずにオスラー病の診断・治療ができるためのノウハウ
市村 恵一
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 62 巻 1 号 p. 109-118

詳細
抄録

オスラー病患者のほとんどが症状として持つ鼻出血であるが,耳鼻咽喉科医ですら適切な対処が取られていない。厄介な鼻出血の原因にオスラー病があると知識には持っていても,治療に懸命になっている最中に本疾患を思いつく耳鼻咽喉科医は少ないのが実情である。そこで,耳鼻咽喉科医がオスラー病だと判定するためのコツと,鼻出血への対処法の要諦を述べる。オスラー病が見過ごされてしまう理由は,診断基準の理解不足,病歴聴取の不足,局所所見のとり方の不徹底に尽きる。診断にはキュラソー診断基準が用いられる。鼻出血患者においては,鼻出血以外の3項目中2項目を満たせば確定例となる。鼻出血を反復している患者さんの鼻の中を見て,血管拡張があると分かった時点でもう臨床診断の疑い例に該当する。あとは問診で,鼻出血の家族歴があったり,肺の血管塞栓や脳梗塞の既往歴があれば確定になるので,そう診断は難しくない。肉眼上血管病変は千差万別で,変化もするので,病歴に比して病変が軽度の時は時期を変えて観察するのがよい。出血のほとんどは鼻腔最前部粘膜からなので,出血時には母指で鼻翼を数分間圧迫させる。止まらないときにはカルトスタット®などを緩めに多めに,血液が染みてこなくなるまで挿入していけば止血する。現状では確実な治療法は存在しないので,出血を予防し,症状を軽減するのが治療目標で,血管壁やその周囲の結合織の強化,それに刺激の減少を図る。

著者関連情報
© 2023 日本鼻科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top