日本鼻科学会会誌
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症例報告
内視鏡下鼻副鼻腔手術と涙嚢鼻腔吻合術を要した鼻腔サルコイドーシス例
徳永 貴広植田 芳樹坂下 雅文高林 哲司成田 憲彦真鍋 恭弘藤枝 重治
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2023 年 62 巻 1 号 p. 167-172

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抄録

サルコイドーシスは原因不明の肉芽腫性疾患で,鼻腔に病変が生じる例はおよそ1%程度と比較的稀である。発症すると鼻閉や痂皮形成,鼻出血,嗅覚障害などの症状や鼻涙管閉塞などを呈し,生活の質が低下する。今回我々は慢性副鼻腔炎と鼻涙管閉鎖症に対し手術を要した鼻腔サルコイドーシスの一例を経験したので報告する。

症例は39歳男性。すでに他院でサルコイドーシスと診断されていたが,流涙,涙嚢部の腫脹,鼻閉を主訴に当院眼科および耳鼻咽喉科を受診した。鼻粘膜は痂皮と肉芽形成により腫脹し,副鼻腔炎および鼻涙管閉鎖を認めた。保存的治療での改善は困難と判断し,まず内視鏡下鼻副鼻腔手術IV型を施行した。術後からステロイド内服を開始し炎症をコントロールした後,副鼻腔手術術後10日目に涙嚢鼻腔吻合術を施行した。涙道は鼻涙管下端で閉塞しており,特に左側の涙嚢部は癒着が強く鼻腔からの距離が遠く,癒着を解除して涙管チューブを挿入した。術後はステロイド内服を漸減しながら継続した。術後2カ月目には涙管チューブを抜去し,その後は鼻腔内の痂皮形成は続いているものの,副鼻腔炎の再発も吻合部の再閉塞もなく経過している。

サルコイドーシスによる肉芽および痂皮形成にともない,副鼻腔炎および吻合部の閉塞が再発する可能性は高いことが予想されるため,今後も慎重な経過観察が必要である。

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