日本鼻科学会会誌
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症例報告
内視鏡下経鼻摘出術で工夫をした眼窩腫瘍例
乙田 愛美小林 正佳鈴村 美聡竹内 万彦
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2023 年 62 巻 2 号 p. 332-337

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抄録

近年内視鏡技術と手術器具の進歩により,経鼻内視鏡手術は適応を広げ,眼窩内腫瘍に対しても適用されている。眼窩の正中より内側に存在する腫瘍,特に眼窩先端部に存在する腫瘍は経鼻内視鏡手術の良い適応であるが,視器機能の悪化を生じないように注意を要する。今回内視鏡下経鼻的眼窩内腫瘍摘出術において凝らした工夫を紹介する。症例は45歳女性。右眼のかすみを発症した。CT検査で右眼窩内側,筋円錐外に位置する腫瘍性病変を認め,MRI検査では血管奇形が疑われ,腫瘍の大きさは22 mm大であった。術前の矯正視力は右眼(1.0),左眼(1.2)で,中心フリッカー値は右が15 Hz,左が32 Hzであり,右視神経機能が低下していた。経鼻内視鏡手術を適用し,ナビゲーションシステム使用下で経中鼻道-篩骨洞経由で眼窩紙様板を外して眼窩内にアプローチした。腫瘍は内直筋と癒着していたが,耳科用,脳神経外科用の手術器具も使用し,助手との協働操作で慎重に剥離して摘出した。最終組織診断も血管奇形であった。術後の矯正視力は両側(1.5),中心フリッカー値は右35 Hz,左39 Hzと著明に改善し,右眼の霧視も消失し,眼球運動も正常であった。鼻腔,篩骨洞内に癒着は生じず,経過良好である。眼窩内側へのアプローチには経鼻内視鏡手術が適しているが,狭い術野での視野と操作のため難度が高い。これを手技と器具の工夫により,良好な術野での安全で確実な手術治療にすることが重要である。

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