日本農村医学会雑誌
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綜説
最近記図されているたこつぼ型心筋障害について
――自験例を中心として――
中野 誠高橋 俊明伏見 悦子竹内 雅治関口 展代木村 啓二林 雅人
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2005 年 54 巻 2 号 p. 91-96

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抄録

 2001年から2003年までの2年間,当院で経験したたこつぼ型心筋障害9例の臨床的特徴とその病態について検討し,壁運動異常の機序について概説する。症例は全例が女性で,平均年齢は73歳であった。発症は身体的,精神的なストレスと関連があり,術後,家族の急病,口論などがきっかけであった。心エコーでは約半数にS字状中隔を認めた。予後については,1例で心不全を続発したが,改善し,死亡例はなかった。左室壁運動異常は1例を除き,2週間後には改善していた。自験例,文献的考察より,発症に循環障害や心筋炎の関与は否定的と考えられる。高齢女性はS字状中隔や左室壁の菲薄化を伴いやすい。この状態に身体的,精神的なストレスによりカテコラミンが放出されると,左室が過収縮し,左室内に圧較差が生じて,心尖部側が虚脱し,本症のような特異な壁運動異常を呈する可能性があると考えられる。

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© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
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