日本農村医学会雑誌
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総説
  • 秋山 明子, 福山 由美
    2026 年74 巻5 号 p. 433-445
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/15
    ジャーナル フリー
     近年,高齢者の保健福祉と農業活動の連携可能性が注目されている。農業活動を介護予防・健康維持の資源として活用するためには,農業活動と介護予防・健康維持との関連性についてエビデンスを整理する必要がある。そこで本研究では,農業活動と介護予防・健康維持との関連性についてエビデンスを整理することを目的にスコーピングレビューを行なった。研究疑問の枠組みは,Population(対象)=40歳以上の人,Concept(概念)=農業活動と介護予防・健康維持との関連性,Context(文脈)=統計的手法を用いて検討している日本国内の研究とした。医学中央雑誌Web(以下,医中誌Web)およびPubMedでの検索とハンドサーチにより,2010年から2024年に発表された日本語および英語の論文を検索した。研究デザインが縦断研究(n=5),横断研究(n=7)の文献12編が採用され,研究対象者は40歳以上の地域住民(n=11)または患者(n=1)であった。農業活動が介護予防・健康維持に寄与することを示した項目は,1)心身の健康,2)主観的健康感・主観的幸福感,3)ソーシャルキャピタル,4)健康行動・生活習慣であった。本レビューにより,農業活動は介護予防・健康維持に有用な資源であることが示された。今後は,本格的な活用に向けて,農業活動の種類,内容,身体活動量,頻度,対象者の背景因子による違いなどについての検討が求められる。
原著
  • 田辺 生子, 渡辺 修一郎, 井上 智代
    2026 年74 巻5 号 p. 446-457
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/15
    ジャーナル フリー
     農村部在住後期高齢者の精神的健康度に影響を及ぼす食生活に関連する要因を検討することを目的にB村在住の高齢者健康診査・栄養調査の参加者504名へ自記式質問紙を用いて調査した。調査内容は,精神的健康度の評価にWHO-5-J得点を用い,食生活に関する項目を把握し,一般線形モデルにより後期高齢者の精神的健康度に影響を及ぼす食生活に関連する要因を性別毎に分析した。
     WHO-5-J得点が高かったのは,男性は主効果では,JST版活動能力指標合計点が高いであった。交互作用では,健康のため食べない食品がある群では,食品摂取多様性得点が高い群においてWHO-5-J得点がより高い傾向がみられた。女性は主効果では,JST版活動能力指標合計点が高い,農村ソーシャル・キャピタル指標が高いであった。交互作用は有意ではなかった。
     農村部在住後期高齢者のWHO-5-J得点が高かった要因の背景には,男女ともに自家菜園の管理を通して社会的交流が促進され,いきがいを得たと感じた可能性があると考える。男性は自身の健康を維持増進しようとする保健行動が反映しており,女性は農作業を通した友人や近隣住民等との交流や地域行事への参加等といった農村ソーシャル・キャピタルが関連したと考える。農村部在住後期高齢者の精神的健康度に影響を及ぼす食生活に関連する要因は性別により異なることが示唆された。
  • 小沼 大翔, 芋生 祥之, 武井 隼児, 万本 健生
    2026 年74 巻5 号 p. 458-465
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/15
    ジャーナル フリー
     変形性膝関節症(膝OA)患者の痛みの強度や持続性に影響を与える要因として,生理学的要因のほか,認知的要因が重要な役割を果たすことが知られている。認知的要因の中でも,疼痛を過度に否定的に捉える破局的思考は,疼痛の慢性化と関連が深いとされている。疼痛に対する破局的思考を客観的に評価するための尺度として,Pain Catastrophizing Scale(PCS)が広く使用されており,PCS合計スコアが30点以上の場合,臨床的に関連性のある破局的思考を示すことが報告されている。膝OAにおけるPCSを用いた破局的思考の評価が有用であることは認識されているが,手術待機中の膝OA患者を対象としたPCSの研究は限られており,不明な点が多い。そのため本研究では,片側人工膝関節全置換術待機中の膝OA患者97名を対象にPCSスコアを算出し,平均値および分布の把握,ならびに性別,年齢,Body Mass Index(BMI),チャールソン併存疾患指数(CCI),Kellgren Lawrence(KL)分類との関連を検討した。統計解析は性別とPCSの比較にはt検定を用い,年齢,BMI,CCI,KL分類とPCSの比較には一元配置分散分析を用いた。有意差を認めた場合には多重比較(Tukey検定)を行なった。その結果,PCSの平均値は31.3±11.5点であり,対象者の58%がカットオフ値である30点を超えていた。特に80歳代,CCIが高い患者は有意に高いPCSスコアを示した。
研究報告
  • 山本 翔太, 福山 由美, 秋山 明子
    2026 年74 巻5 号 p. 466-472
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/15
    ジャーナル フリー
    〔目的〕本研究は,農業公園の利用者を対象に,農業活動の実態を把握し,農業活動の有無による健康への影響について検討した。
    〔方法〕令和6年10月1日~11月30日に鹿児島市観光農業公園の利用者52名を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施した。農業活動の頻度に基づき,「農業活動あり群」と「農業活動なし群」に分類し,活力・健康意識・主観的健康感についてt検定を用いて比較した。
    〔結果〕農業活動あり群は,農業活動なし群と比較して,「農作業をしていると活力がみなぎる」(p=0.017)および「朝に目が覚めると体を動かしたくなる」(p=0.010)の得点が有意に高かった。一方,主観的健康感については両群間で有意差はみられなかった。
    〔結論〕本研究は,農業活動と活力の関連を示し,介護予防の観点から活力に寄与する可能性を示唆した。
  • 鈴木 千晴, 鈴木 純代
    2026 年74 巻5 号 p. 473-479
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/15
    ジャーナル フリー
     当院は入退院支援センター(以下,センター)を2022年に開設したことで,入院説明に対して患者が不安や不満を感じていること,スタッフがセンター業務に問題を感じていることなどが明らかとなった。具体的には,1.外来各ブロックでバスタオル・タオルの入院時準備物品の説明が異なる 2.診療科により小児患者への入院説明用紙が異なる 3.医療者用パスと患者用パスに齟齬がある 4.多職種による情報収集と記録内容に多重タスクを生じているなどである。これらの問題に対して,患者の不安や不満を軽減ならびにセンタースタッフの業務負担軽減を図ることを目的にセンタースタッフと関連部署と意見交換し業務整理を行なった。そして得られた効果を以下に示す:患者は手術時にバスタオル・タオルの準備が不要となった。小児患者への共通入院説明用紙の作成と使用が可能となった。医療者用パスと患者用パスの整合性を図ることができ,患者用パスの最新化が図れた。また,外来とセンター間で情報収集の機能的分担を可能とし,反復聴取される患者の負担が解消された。センターが診療科,部署,職種間と顔の見える関係性構築の中核を担うことで業務整理が可能となりスタッフの負担軽減ができたのと同時に患者との連携の仲立ちをすることで患者の不安や負担軽減にも繋がった。
症例報告
  • 中出 詩和, 加藤 哲司, 山岸 逸郎
    2026 年74 巻5 号 p. 480-484
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/15
    ジャーナル フリー
     Crowned dens syndrome(CDS)は軸椎歯突起周囲の靱帯にピロリン酸カルシウム結晶(CPPD)が沈着し,発熱,頸部痛,頸部の可動域制限,炎症所見を示す急性関節炎で,高齢女性に好発する偽痛風の一型である。血液検査で白血球やCRPなどの炎症反応の上昇を認め,頸椎CTで軸椎歯突起周囲に石灰化を認める。CDSは髄膜炎,リウマチ性多発筋痛症,巨細胞性動脈炎,化膿性脊椎炎などとの鑑別が必要である。XP,MRIでは病変の抽出が困難なため,CT撮影が有用である。治療はNSAIDs内服が第一選択で,他にコルヒチンも使用される。効果不十分例では中等量のステロイド併用が推奨されている。通常1~2週間で軽快する予後良好な疾患である。
  • 宮岡 陽一, 吉田 祐一, 岩口 佳史, 横山 良司, 中野 詩朗
    2026 年74 巻5 号 p. 485-489
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/15
    ジャーナル フリー
     症例は38歳女性。数か月前に母指頭大の左鼠径部腫瘤を自覚していた。受診数日前より腫瘤が急激に増大し,疼痛を伴うようになったため,当院受診。CT検査にて子宮円靭帯の走行に沿った嚢胞性病変を認め,Nuck管水腫が疑われた。腹腔鏡下TAPP法にて嚢胞を完全摘出し,同時にヘルニア修復を施行。病理組織学検査によりNuck管水腫および子宮内膜症の合併が確認された。術後経過は良好で,再発や合併症は認められていない。本疾患の診断・治療には画像評価と適切な外科的手技が重要である。
  • 酒徳 弥生
    2026 年74 巻5 号 p. 490-496
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/15
    ジャーナル フリー
     外傷性腹壁ヘルニアは,外傷によって加わる外力で腹壁の筋損傷が起きるが,筋および筋膜の破裂のみで皮膚や皮下組織の断裂や損傷を伴わず,腹腔内臓器が皮下に脱出する稀な病態である。今回,腹腔内臓器損傷を伴わない外傷性腹壁ヘルニアに対し,待機的腹腔鏡下ヘルニア根治術を施行した1例を経験したため報告する。
     症例は74歳,女性。交通外傷で当院搬送となった。右季肋部に立位で膨隆,臥位で膨隆消失する腫脹を認め,CTで右腹壁に9.6×6cm大の腹筋群断裂と皮下に脱出する腸管を認めた。同部位に手術歴はなく,外傷性腹壁ヘルニアと診断した。他に明らかな臓器損傷は認めず,ヘルニア嵌頓も認めなかったため,受傷18日目に腹腔鏡下ヘルニア根治術を施行した。ヘルニア門の全周を約4cmオーバーラップするようメッシュを腹腔内に留置した。術後経過は良好で,1年7か月経過し再発は認めていない。
  • 山森 玲奈, 熊谷 恭子, 山田 美咲, 大鹿 茜, 永井 彩華, 高木 佳苗, 村上 真凪, 山内 桂花, 柴田 茉里, 水野 輝子, 平 ...
    2026 年74 巻5 号 p. 497-503
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/15
    ジャーナル フリー
     症例は41歳,2妊0産。20歳で2型糖尿病と診断されたが通院自己中断し,39歳時にHbA1c 11.2%を指摘され治療を開始した。この時点では,増殖糖尿病網膜症,糖尿病性腎症2期であった。40歳で自然妊娠し,妊娠初期ではHbA1c 7.3%,BMI 30.1kg/m2であった。妊娠12週で左眼に少量の硝子体出血を認め,妊娠19週に左眼の硝子体出血の増悪を認め網膜光凝固術が行なわれるも牽引性網膜剥離が進行し,妊娠28週で重篤な視力障害に陥った。妊娠子宮および高度肥満により硝子体手術後の腹臥位保持が困難と判断したため,妊娠29週3日に帝王切開術を行ない,術後可及的速やかに硝子体手術が施行された。早産ではあるが生児を得ることができ,母体の視力回復および社会的失明を回避することができた。挙児希望のある糖尿病女性では,積極的に関連診療科と連携し妊娠前から糖尿病合併症の評価を行なっていく必要がある。
資料
  • 藤木 悠斗, 伊藤 良剛, 横山 栄作, 森 章浩, 筆谷 拓
    2026 年74 巻5 号 p. 504-508
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/15
    ジャーナル フリー
     MRI室における金属類の吸着・持ち込み事故は全国で多発しており,金属の持ち込みの危険性が広く知られている。日本医療機能評価機構からMRI検査室への磁性体持ち込みについて,いくども医療安全情報が出されており,いかに重要な案件かが窺える。2017年の第66回日本農村医学会学術総会では職員による金属類の吸着・持ち込み事故対策を報告した。しかしながら,患者に起因する金属の持ち込みが発生したため,新たな事故防止対策として非金属性車椅子と木製ストレッチャーの導入と従来の職員を主とする事故防止対策の形骸化を防ぐ取り組みを試みた。事故防止に効果を認めたので報告する。
  • ─愛知県2市における質的研究手法を活用した構造化アプローチ─
    平川 仁尚
    2026 年74 巻5 号 p. 509-512
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/15
    ジャーナル フリー
     日本では高齢化が進み,地域包括ケアシステムの構築が求められている。しかし,住民の参加が十分に進んでいない地域もあり,職種間の認識の違いや制度の制約が連携を阻害する要因となっている。本活動では,愛知県内の2市において,住民参加を促進するための構造化アプローチを導入し,質的研究手法を活用した支援を実施した。まず,自治体関係者へのオンラインインタビューを実施し,AIを用いた文字起こしと質的分析を行ない,住民の課題や必要とされる支援策を抽出した。次に,住民参加型ワークショップを実施し,二次元展開法を用いて課題の優先順位を決定した。さらに,フィッシュボーン分析による原因究明を行ない,住民主体の交流拠点づくりのための具体的なアクションを曼荼羅チャートを用いて整理した。本活動を通じて,住民が主体的に地域課題に関与し,協働の姿勢が育まれた。この成果を他地域へ展開するため,自治体と連携し,住民のフィードバックを活かしながら持続可能な地域支援モデルの構築を進める。
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