認知症せん妄サポートチーム(以下,DDST)では,定期的に院内ラウンドを行なっている。介入時に不眠時・不穏時に対する指示が入っていない,せん妄患者や高齢者にベンゾジアゼピン(以下,BZD)受容体作動薬が指示されているのを散見した。その一因が,不眠時・不穏時に対する指示の院内指針が定まっていないことと考え,電子カルテのベンダー変更を契機に,指示定着や薬剤適正使用を目的として推奨薬剤を設定した。入院時の不眠時・不穏時に対する指示割合(以下,指示率),指示された薬剤を調査し,前後比較した。(設定前:2019年1月~3月,設定後:2020年1月~3月)不眠時の指示率は設定前が88.6%(1,779/2,007),設定後が91.9%(1,902/2,069)で有意に上昇していた。BZD受容体作動薬の指示率は,設定前が47.7%(848/1,779),設定後が41.6%(792/1,902)で有意に低下していた。不穏時の指示率は,設定前が71.2%(1,429/2,007),設定後が85.6%(1,771/2,069)で有意に上昇していた。推奨薬剤設定が入院時の不眠時・不穏時の指示率上昇,BZD受容体作動薬の指示率低下にそれぞれ影響した。電子カルテのベンダー変更を契機として,不眠時,不穏時の推奨薬剤を設定することは,指示の定着,薬剤適正使用に有用な手段の1つとなることが明らかとなった。
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