日本農村医学会雑誌
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最新号
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原著
  • 市江 敏和, 久保田 乃吏子, 本田 知世, 横出 恵実, 南川 真由, 大嵜 美香, 佐々木 翼, 廣海 美智代, 三浦 毅, 野々垣 禅
    2024 年 73 巻 4 号 p. 347-355
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/15
    ジャーナル フリー
     認知症せん妄サポートチーム(以下,DDST)では,定期的に院内ラウンドを行なっている。介入時に不眠時・不穏時に対する指示が入っていない,せん妄患者や高齢者にベンゾジアゼピン(以下,BZD)受容体作動薬が指示されているのを散見した。その一因が,不眠時・不穏時に対する指示の院内指針が定まっていないことと考え,電子カルテのベンダー変更を契機に,指示定着や薬剤適正使用を目的として推奨薬剤を設定した。入院時の不眠時・不穏時に対する指示割合(以下,指示率),指示された薬剤を調査し,前後比較した。(設定前:2019年1月~3月,設定後:2020年1月~3月)不眠時の指示率は設定前が88.6%(1,779/2,007),設定後が91.9%(1,902/2,069)で有意に上昇していた。BZD受容体作動薬の指示率は,設定前が47.7%(848/1,779),設定後が41.6%(792/1,902)で有意に低下していた。不穏時の指示率は,設定前が71.2%(1,429/2,007),設定後が85.6%(1,771/2,069)で有意に上昇していた。推奨薬剤設定が入院時の不眠時・不穏時の指示率上昇,BZD受容体作動薬の指示率低下にそれぞれ影響した。電子カルテのベンダー変更を契機として,不眠時,不穏時の推奨薬剤を設定することは,指示の定着,薬剤適正使用に有用な手段の1つとなることが明らかとなった。
  • 林 美月, 松川 泰, 井上 美奈, 左右田 昌彦, 加藤 悠太, 山内 桂花, 柴田 茉里, 水野 輝子, 熊谷 恭子, 木村 直美, 樋 ...
    2024 年 73 巻 4 号 p. 356-362
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/15
    ジャーナル フリー
     超音波検査による胎児形態異常の評価は出生前診断の1つであり,周産期管理において重要な検査であると考える。当院では,2014年7月より臨床検査技師が妊娠22週以降の検査希望妊婦を対象に胎児形態評価のための胎児超音波検査を行なっている。2014年7月から2021年12月の期間に実施した胎児超音波検査のうち,児の転帰不明症例,再検査症例を除く2,186例について,検査時所見と出生後所見の診断の差異について調査,検討を行なった。胎児超音波検査時に形態異常所見ありと報告した79例のうち,出生後形態異常所見ありと診断された症例(Ⅰ群)は39例,出生後形態異常所見なしと診断された症例(Ⅱ群)は40例であった。検査時に形態異常所見なしと報告した2,107例のうち,出生後形態異常所見ありと診断された症例(Ⅲ群)は95例,出生後形態異常所見なしと診断された症例(Ⅳ群)は2,012例であった。検査精度は対象症例全体で感度29.1%,特異度98.1%,陽性的中率49.4%,陰性的中率95.5%であった。限られた時間の中で行なう妊婦健康診査(以下,妊婦健診)では対応しきれない可能性がある胎児形態評価を臨床検査技師が実施することは,周産期管理において有用であると考える。
  • 緒方 久美子, 中嶋 恵美子, 三浦 伸一郎, 坂梨 左織, 鮫島 由紀子
    2024 年 73 巻 4 号 p. 363-371
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/15
    ジャーナル フリー
     本研究は,地域で暮らす心疾患をもつ高齢者のライフスタイル,フレイルの実態とフレイルに関連する要因を明らかにすることを目的とした。循環器内科外来に通院する65歳以上の患者1,277名を対象に,郵送法による無記名の自記式質問紙調査を行なった。調査項目は基本属性,健康・心疾患に関する情報,ライフスタイル,フレイルについてであった。分析方法は,記述統計およびt検定,ピアソンの積率相関分析を行なった。分析対象は回答が得られ,かつ欠損値が少なかった362名であった。社会的な繋がりを持つライフスタイルをとる者が3割未満である一方,食事や血圧管理などの健康習慣をもつ者は8割以上を占めた。4人に1人以上が運動器の機能,口腔機能でフレイル状態であった。女性であること,経済状況と健康状態が悪いこと,健康的な食習慣や運動習慣がないことなどは,フレイルに有意に関連した。心疾患高齢者が自立した生活を続けるためには,疾患の症状管理,口腔の健康保持,低栄養を予防する食習慣,関心事に合わせた運動習慣を持つことが重要である。
  • ─標準的シリンジ交換方法とオンオフ法およびダブル法の比較─
    野村 浩, 柴山 健三
    2024 年 73 巻 4 号 p. 372-381
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/15
    ジャーナル フリー
    〔研究目的〕ドパミンをシリンジポンプで投与する際に,シリンジ交換による薬剤投与量の減少は循環動態の変動を来す可能性があるため,いくつかの交換法が工夫されている。本研究は各交換法について,交換に要する時間,交換時の薬剤投与量を評価することにより,至適な交換法を検討することを目的とした。
    〔研究方法〕実験Ⅰ:標準的シリンジ交換法とフラッシュ法でシリンジ交換にかかる時間をMann-Whitney U検定で評価し,シリンジ交換時におけるドパミン液未注入量を推定した。実験Ⅱ:ドパミンの一般的初期投与量である3.6ml/hと一般的標準投与量である6.0ml/hについて,オンオフ法およびダブル法でのシリンジ交換後から60分時までのドパミン液注入量を,標準的シリンジ交換での注入量との間で比較検討した。
    〔結果・考察〕シリンジ交換時間では,標準的シリンジ交換法とフラッシュ法間に有意差は認められなかった。また,シリンジ交換時間内のドパミン液未注入量は,いずれの設定流量ともに0.1ml未満であった。設定流量3.6ml/hでは,注入開始して10分時にダブル法とオンオフ法で,注入時間30分と50から60分時ではオンオフ法のみで標準的シリンジ交換法に比較して有意に注入量が増加していた。一方,設定流量6.0ml/hではいずれの時間においても有意差が認められなかった。この理由として設定流量が高いと摺動抵抗の影響が小さくなる可能性が示唆された。
症例報告
  • 鈴木 博也, 仲野 宏, 林下 宗平, 佐久間 芽衣, 金澤 匡司
    2024 年 73 巻 4 号 p. 382-389
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/15
    ジャーナル フリー
     症例は66歳男性。間欠的な腹痛を主訴に当院を受診した。腹部超音波検査で右側腹部に腫瘤とTarget signを認め腸重積が疑われた。後日CT検査,下部消化管内視鏡検査を追加したところ上行結腸に5cm大の脂肪腫を認めたが,腸重積は自然と改善しており外来で経過を見ていた。内視鏡治療も考慮されたが,サイズが大きいことから手術目的に1か月後に当科へ紹介された。その際CTを再検したところ腸重積が再燃していた。経口摂取可能で,排便も認め腸閉塞の症状がなく,腹痛も軽度であったことから外来での経過観察を継続し,待機的に腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行した。術後は合併症をきたさず術後8日目に退院した。
     腸重積をきたした大腸脂肪腫の症例は比較的稀である。良性疾患であり,整容性に優れ,術後の回復も早い腹腔鏡手術の良い適応である。また腸重積をきたしていても,腸閉塞をきたしておらず,腹痛が軽度であれば,1~3か月程度の待機的手術も選択できると思われた。
  • 叶多 諒, 仲野 宏, 鈴木 博也, 林下 宗平, 佐久間 芽衣, 金澤 匡司
    2024 年 73 巻 4 号 p. 390-396
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/15
    ジャーナル フリー
     メトロニダゾールは嫌気性菌に有効な抗菌薬であり,注射剤の登場で腹腔内感染症を伴う患者など消化器領域で使用される場面が増えている。メトロニダゾールの副作用として中枢神経障害があり,メトロニダゾール脳症として知られている。症例は68歳男性。X年3月前医で直腸癌に対して腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行した。術後,骨盤死腔炎,会陰創感染に対してメトロニダゾールの内服が開始され内服継続のまま退院となった。X年5月,術後化学療法のため自宅近くの当院に紹介となった。X+1年2月,構音障害が出現し頭部MRIを撮影したところFLAIR像で左右対称性に小脳歯状核に高信号域を認めた。内服歴とMRIの所見からメトロニダゾール脳症が疑われ,メトロニダゾールを中止したところ3日程度で症状は改善したので臨床経過よりメトロニダゾール脳症と診断した。メトロニダゾールの使用に際しては,投与量,投与期間に留意し,副作用の早期発見に努めるべきである。
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