日本農村医学会雑誌
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最新号
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原著
  • 辻村 早苗, 渕田 英津子
    2021 年 69 巻 5 号 p. 445-456
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/13
    ジャーナル フリー
     地域包括ケア病棟の先行研究は,体制や運用に関するものが多く,地域包括ケア病棟看護師のチームケアの報告はない。そこで,本研究では地域包括ケア病棟看護師のチームケアを促進する要因を明らかにすることを目的とした。
     「地域包括ケア病棟入院料1・2」を届出受理され,地域包括ケア病棟協会に加入している医療機関を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した。調査項目は,地域包括ケア病棟の体制,地域包括ケア病棟看護師の基本属性,カンファレンスの種類,地域包括ケア病棟看護師の「連携意識」「目標や情報の共有」「多職種連携実践能力」とした。分析は,記述統計量算出後,各項目と「連携意識」「目標や情報の共有」「多職種連携実践能力」の得点差の比較検討を行ない,「連携意識」4因子と「目標や情報の共有」3因子の得点を独立変数,「多職種連携実践能力」総得点を従属変数として,関連性を検討した。
     地域包括ケア病棟看護師452人(回収率35.7%)から回答を得,309人(有効回答率68.3%)を分析対象とした。重回帰分析により,地域包括ケア病棟看護師のチームケアに影響する要因は,患者の病状や生活の予測的判断,チームのもつ目標の明確化,ケア方法やケアの方向性の提案・検討・合意,チームのさらなる成長のための協働であると示された。これらの要因を地域包括ケア病棟で実践することで,地域包括ケア病棟のチームケアが促進されると考える。
  • 佐藤 昌, 伊澤 和倫, 櫻井 雅博
    2021 年 69 巻 5 号 p. 457-463
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/13
    ジャーナル フリー
     下顎智歯の根尖は下歯槽神経血管束と近接しており智歯抜歯により,オトガイ神経知覚異常が引き起こされる可能性がある。近年,歯科用コーンビームCTの普及により歯科口腔外科疾患の診断にCBCT画像を用いられるようになってきた。今回下顎埋伏智歯抜歯を行なった症例において,CBCT画像所見とオトガイ神経知覚異常発現との関連性について調査した。
     対象は2016年3月から2019年3月の間に下顎埋伏智歯抜歯を施行した患者345例401歯で,平均年齢は33.9±14.6歳(16〜81歳)であった。全症例パノラマX線写真撮影を行ない,抜歯後にオトガイ神経知覚異常のリスクがあると判断した症例にCBCT撮影を行ない,CBCT非撮影群と比較検討した。
     CBCT画像は下顎智歯が下顎管に最も近接する位置で下顎管の変形度を4タイプに分類し評価した。
     CBCT撮影群は69例89歯でオトガイ神経知覚異常は5.7%に,CBCT非撮影群では0.64%に認められた。CBCT撮影群で下顎智歯と下顎管が接触していないものが51例に認められた。
     下顎管が変形している症例ではオトガイ神経知覚異常が起こりやすいことが示唆され,CBCTはオトガイ神経知覚異常の予見に有用であると考えられた。
  • 玉井 公子, 星野 明子, 吉岡 さおり, 桂 敏樹
    2021 年 69 巻 5 号 p. 464-477
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/13
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,行政保健師の職務満足感測定尺度を開発し,信頼性と妥当性を検討することである。
     行政保健師への半構造的面接から得られたデータと文献検討および内容妥当性の検討により74項目の尺度案を作成した。行政保健師1,030人を対象に質問紙調査を実施し,尺度の信頼性・妥当性を検討した。
     有効回答の得られた422人(41.0%)を分析対象とした。項目分析の後,主因子法,プロマックス回転による探索的因子分析の結果,3因子18項目が抽出され,下位因子は【保健師の職務内容と責務】【上司の理解と成長を促す環境】【住民への思いと信頼】と命名された。また,検証的因子分析を実施した結果,探索的因子分析で得られた仮説モデルの適合度が確認された。
     尺度の信頼性はCronbach's α係数0.907(下位尺度0.847~0.900)で確認された。再テスト法による級内相関係数はr=.847(下位尺度r=.727~.830)であり安定性が確保された。基準関連妥当性は,尺度案と全般的職務満足感尺度(r=.642,p<.001),自尊感情(r=.452,p<.001),自己効力感(r=.441,p<.001),対人支援能力(r=.452,p<.001),地域支援及び管理能力(r=.532,p<.001)各尺度と正の相関により確認された。
     以上から,信頼性・妥当性のある3因子18項目からなる行政保健師の職務満足感測定尺度が開発された。今後,多様化する行政保健師の人材育成に職務満足感の側面から寄与することができる内容であり,人材育成の一環として使用することが可能であると考える。
研究報告
  • ─半球障害左右の違いによる比較─
    三好 陽子, 柴山 健三, 伊藤 千晴
    2021 年 69 巻 5 号 p. 478-488
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/13
    ジャーナル フリー
     脳血管障害(CVD)患者は2000年4月からの新制度により,急性期治療後に回復期リハビリテーション病棟(回復期リハ病棟)へ移動し,その中で治療や看護を受けている。回復期リハ病棟に入院したCVD患者のQOLと心理的適応を3回(入院時・中間時・退院時)調査し,その推移を半球障害の左右の違い(右脳群19名,左脳群17名)により比較することを目的とした。QOLは質問票SF-36,心理的適応は質問票NAS-J-Dを使用して調査した。QOLでは,入院時の左脳群は右脳群より低かったが,退院時までに身体的と精神的健康度が急激に改善していた。右脳群は入院時から左脳群に比べてQOLが比較的高く,入院中では身体的健康度のみ改善していた。退院時には左脳群と右脳群はほぼ同じ程度であった。心理的適応では,両群ともに「不安・うつ」,「障害態度」,「障害受容」は入院中に適応していき,退院時の左脳群と右脳群はほぼ同じであった。以上により,CVD患者の入院中のQOLでは,入院時の左脳群は右脳群より低かったが,入院時から退院時に向けて急激に改善し,退院時には右脳群とほぼ同じ程度まで回復されることが示唆された。そして心理的適応は,両群ともに,入院時から退院時にかけて大きな差はなく適応していき,CVD後遺症として懸念される「不安・うつ」も,退院時には両群ともに適応されることが示唆された。
  • 杢保 貴幸, 濵田 真由子, 石井 康友, 宮本 彩, 向井 浩一朗, 徳竹 裕貴, 植田 宏治, 松岡 裕士
    2021 年 69 巻 5 号 p. 489-493
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/13
    ジャーナル フリー
     インフルエンザを発症した患者の同室者や濃厚接触者に対して曝露後予防投与を行なう場合がある。オセルタミビルの添付文書では7~10日の投与とされているが,院内規定は5日の投与と設定している。今回,入院患者,医療従事者の曝露後予防におけるオセルタミビル5日間投与の有効性評価と病院経営への影響について検討した。診療録を基にインフルエンザ2次感染の有無を後方視的に調査した。調査期間は2013年度〜2017年度の5年間とした。有効性評価は2次感染率(発症患者のインフルエンザ診断から診断日を含めて10日以内に2次感染が認められた患者数/予防投与を行なった人数×100)とした。また,オセルタミビルの5日間投与と添付文書に従ったと仮定した場合の薬剤費の比較を行なった。オセルタミビルによる曝露後予防投与を行なった入院患者は133名,医療従事者は434名,2次感染率は3.0%(4/133件),0.5%(2/434件)であった。薬剤費は10日間投与と仮定した場合と比較して50%(約85万円)減少した。オセルタミビルの5日間投与の有効性は他の報告と同等以上であり,有効であったと考えられる。また,2次感染予防は入院期間延長の回避が期待され,副次的に病院経営に貢献した可能性があると示唆される。
  • 川村 由里, 西崎 未和, 田口(袴田) 理恵
    2021 年 69 巻 5 号 p. 494-505
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/13
    ジャーナル フリー
     本研究は看護師がとらえた在宅人工呼吸療法(HMV)を行なう外出未経験の筋萎縮性側索硬化症(ALS)療養者が持つ外出への思いと,その思いに対し外出を可能とするために看護師が行なった支援を明らかにすることを目的とした。外出未経験のALS/HMV療養者に対し外出支援経験のある看護師5名に,半構造的面接および帰納的分析を行なった。看護師がとらえた外出未経験のALS/HMV療養者が持つ外出への思いは,≪外出への希求≫,≪姿勢保持や身体的苦痛に対する懸念≫,≪機器トラブルへの懸念≫など9カテゴリであった。これらの思いに対し外出を可能とするために看護師が行なった支援は,【危険への予測と対応を準備する】,【療養生活に外出を取り入れるように促す】,【外出のタイミングを見計らう】など7カテゴリであった。看護師はALS/HMV療養者の外出に対する積極的,消極的思いをとらえ,安全性の確保,意欲の向上,懸念の解消,主体性の向上を通して生活拡大にむけて支援していた。
  • 石橋 一樹, 古土井 明, 進藤 源太朗, 山下 未紗, 趙 成大, 野中 裕広, 藤本 佳史, 兵庫 秀幸, 相坂 康之, 徳毛 宏則
    2021 年 69 巻 5 号 p. 506-509
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/13
    ジャーナル フリー
     平成24年1月より大腸悪性狭窄に対する内視鏡的ステント留置術が保険収載され標準化しつつある。今回大腸悪性狭窄に対して当院にて内視鏡的ステント留置術を施行した65症例について検討した。結果はBTS 84.6%,PAL 15.4%であり,ステント留置率は98.5%であった。早期偶発症はステント脱落が1例,晩期合併症は便塊貯留による再閉塞が1例,ステント逸脱が2例であり穿孔等の重篤な偶発症は認められなかった。ステント留置後の経過についてはBTS症例は54例中53例が手術(ステント留置から手術までの期間は平均20日),1例が化学療法,PAL症例はステント留置から死亡までの期間は平均73日であった。大腸悪性狭窄に対する内視鏡的ステント留置術は技術的成功率が高く偶発症も少なく安全性,有効性に優れた手技と思われた。
  • 洞口 正志, 齊藤 礼次郎, 齊藤 佑介, 布瀬川 和樹, 石井 大介, 熊谷 卓郎, 川原田 康, 久保田 洋介, 榎本 好恭, 平山 克 ...
    2021 年 69 巻 5 号 p. 510-515
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/13
    ジャーナル フリー
     食道癌治療の向上のため,食道切除再建時に空腸瘻造設を行なってきた。有用性を実感する一方で腸瘻関連の腸閉塞が問題であった。それゆえ,空腸の腹壁固定を行なわない経横隔膜経胃管経腸栄養カテーテル留置法について検討した。2012年11月から2014年3月までに食道切除後縦隔経路胃管再建術時に経横隔膜経胃管経腸栄養カテーテル留置を行なった食道癌18症例を対象とした。カテーテルは胃管から消化管内に誘導し,先端はTrize靭帯より遠位の空腸に留置,胃管からは,横隔膜沿いに腹膜外経路で前腹壁に誘導した。全症例でこれまでの空腸瘻と同様に使用出来た。留置後5年経過し,カテーテル留置に関連した腸閉塞はなかった。カテーテルの縦隔内への逸脱症例を1例経験した。後縦隔胃管再建時の経胃管経腸栄養カテーテル留置法は空腸瘻に伴う腸閉塞の回避に有用である。一方で,縦隔内へのカテーテルの逸脱という問題を含有していた。
  • ─希望する在宅生活の継続を可能とする地域医療体制の構築に向けて─
    加藤 大輔, 塩路 直子, 池田 朋広
    2021 年 69 巻 5 号 p. 516-524
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/13
    ジャーナル フリー
     医療ニーズを持つ患者が自宅での生活を希望しており,地域特性に応じた連携体制の整備が急務となっている。連携を担う1職種である医療ソーシャルワーカー(MSW)は,業務指針に地域活動が示されているが,退院支援業務が中心となっている現実がある。そこで,MSWによる望ましい地域活動のあり方を明らかにする目的で文献調査を行なった。方法は,MSWの地域活動に関する国内の文献を基に,実践事例論文からはMSWが中心的に介入している実践を抽出し,調査研究論文からは地域活動に影響している要因を,阻害要因と促進要因に分類して抽出した。その結果,実践は「多機関多職種間の連携体制の構築」「地域生活を支えるコミュニティネットワークの構築」「サロン等地域住民の交流の場の創設等による地域の活性化」「勉強会の開催等,地域全体に対する啓発活動」であった。次に阻害要因は,「所属機関の業務規定等による活動の制限」「業務割合が退院支援中心であること」「配置人員不足」「MSW独自の役割のあいまい化」の4点に,促進要因は,「院内外から取り組みによる効果に理解を得る」「多機関多職種や地域の非専門職との連携を促進する」「MSW独自の役割を果たす」「地域での立場と院内での業務を確立する」の4点に集約された。地域活動の定着に向けた課題解決には,ソーシャルワークに基づく視点と手法による実践,院内での業務環境の整備,院内外での地域連携における役割の確立が重要であった。
症例報告
  • 唐澤 忠宏, 宮尾 愛, 萩原 俊美, 矢澤 正信
    2021 年 69 巻 5 号 p. 525-529
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/13
    ジャーナル フリー
     兵庫県で,ペット犬に付着したダニに咬まれて,40代の女性が発熱した。その後,山梨県の別荘に移動した。両県で医療機関を受診し投薬治療されたが症状は改善せず,別荘近くの長野県にある当院に入院した。急性期DICの状態であった。我々は問診からダニ関連感染症を疑い,ドキシサイクリンとレボフロキサシン投与で治癒した。退院から9か月後,国立感染症研究所が実施した血清学的検査により日本紅斑熱であることが確定した。同疾患の長野県における報告は稀である(1999年から3症例)。しかしながら本症例報告からわかるように,同疾患は,急性の高熱・皮疹患者を診察したときには地域にかかわらず鑑別に挙げるべき感染症であると強調したい。
  • 太田 祐介, 長橋 究, 小島 康裕, 上原 博和
    2021 年 69 巻 5 号 p. 530-534
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/13
    ジャーナル フリー
     72歳,女性。大動脈弁狭窄症による心不全のため大動脈弁置換術を予定していたが,血小板減少を認めヘパリン起因性血小板減少症Ⅱ型と診断された。手術の延期が考慮されたが,循環動態が不安定であったため予定通り大動脈弁置換術を施行した。
     手術開始時にアルガトロバンを4μg/kg/minで持続静注を開始し,人工心肺開始時にメシル酸ナファモスタットを30mg/hで開始した。活性化凝固時間の推移を確認しながらアルガトロバンの投与量を調節した。大動脈遮断解除後,アルガトロバンの投与を終了し,大動脈遮断解除の1時間後に人工心肺を終了した。止血に難渋し人工心肺終了から7時間後に手術を終了した。手術時間12時間21分,人工心肺時間3時間10分,出血量3444mL,輸血量6400mLであった。
     本症例は,過去の症例報告と比較してアルガトロバンの投与量は少なかったが,人工心肺終了後の出血量を減らすことはできなかった。
  • 江部 誓美, 春日部 こずえ, 山本 幸佑, 今和泉 幸恵, 大橋 圭, 六鹿 泰弘, 長崎 理香, 浜田 実邦, 小久保 稔
    2021 年 69 巻 5 号 p. 535-540
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/13
    ジャーナル フリー
     当院で経験した母児間輸血症候群の4症例において重症度,児末梢血Hbと酸素需要期間の関連を検討した。症例1はHb 7.0g/dL,網状赤血球177‰,輸血なし,酸素投与3日間。症例2はHb 4.7g/dL,網状赤血球132‰,輸血あり,酸素投与7日間。症例3はHb 4.1g/dL,網状赤血球202‰,輸血あり,酸素投与12日間。症例4はHb 3.6g/dL,網状赤血球48‰,輸血あり。新生児仮死のため人工呼吸管理,酸素投与を開始。日齢50に酸素投与中止,人工呼吸管理は継続し,日齢198に気管切開を施行。網状赤血球数から急性失血に分類される症例4は慢性失血に分類される症例1~3に対して予後が不良であった。予後が良好であった症例1~3では,児末梢血Hb値が低いほど酸素需要期間が長い傾向が認められた。
資料
  • 赤塚 直哉, 森 章浩, 遠藤 慎士, 寺澤 実
    2021 年 69 巻 5 号 p. 541-548
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/13
    ジャーナル フリー
     医薬品の使用において,安全な環境を整備しリスクを低減する体制の確保が求められている。当院のアイソトープ検査では放射性医薬品の使用における運用体制が十分ではなく課題となっていた。これを受け,放射線を管理・使用する診療放射線技師と医薬品の安全管理をする薬剤師が協働し,当院の放射性医薬品の調製・管理に対する運用体制を検討した。「放射性医薬品取り扱いガイドライン」に準じて,医薬品の見直し・チェックリストの作成・作業環境の整備等に取り組み,リスクを低減する体制を構築した。他の職種と協働して安全管理・安全使用の体制の見直し・改善を図ることにより,ダブルチェックによるリスクの低減と日常業務で慣習化していた作業環境の改善が可能となった。当院で行なった取り組みを報告する。
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