2009 年 57 巻 6 号 p. 873-877
抗腫瘍薬の開発により副作用の軽減や良好な治療成績の報告がなされており,卵巣癌において長期生存が可能となった。一方で長期投与による晩期有害事象としての骨髄異形成症候群 (MDS) や白血病が問題となっている。今回我々は抗腫瘍薬開始後30か月でMDSを発症した症例を経験した。症例は59歳,卵巣癌IIIcに対して,術前化学療法としてパクリタキセル/カルボプラチン (TC) を3コース実施後,根治手術実施した。術後weekly TC 16コース実施した (16コース目ではパクリタキセルの副作用のため途中で中止)。3か月の無病期間の後にCA 125の再上昇,PET-CTにて再発を認めた。ドセタキセル,ブリプラチン,ゲムシダビン,トポテシンを投与したが抗腫瘍効果を認めなかった。その後遷延する血小板の低下,貧血を認めた。骨髄検査にてMDSと診断された。以後は化学療法を行なわず対症療法のみであるが,幸い白血病化はしていない。