2014 年 62 巻 6 号 p. 929-940
保健医療計画では, 二次医療圏を単位として医療提供体制の整備が行なわれてきた。しかし, 住民の受療行動は, 必ずしも二次医療圏内で完結しないことから, 実際の行動に基づく検討が必要である。本研究では, 住民の受療行動を明らかにするため, 島根県雲南市大東町・加茂町と邑智郡邑南町で実施した健康調査対象者のうち高血圧症515名, 脂質異常症253名, 糖尿病104名の治療者について, 二次医療圏外の医療施設の選択状況とその要因について自家用車利用群・非利用群に分けて解析した。その結果, 雲南市, 邑南町の両地域では, 糖尿病治療者で高血圧症治療者, 脂質異常症治療者に比べて二次医療圏外の医療施設を選択している者の割合が高かった。また, 高血圧症治療者について二次医療圏外の医療施設を選択する確率は, 雲南市の女性自家用車利用群と頸動脈プラークスコア高値者, 邑南町の女性自家用車利用群で有意に低下した。糖尿病治療者では, 二次医療圏外の医療施設を選択する確率は, 雲南市のバス停までの距離が長い自家用車利用群, 邑南町の女性自家用車利用群, BMI高値者で有意に低下した。なお, 自家用車非利用群では, 各選択要因について有意な関係を認めなかった。以上より, 中山間地域の医療提供体制の検討では, 隣接医療圏の医療資源や住民の生活様式を踏まえた議論が必要であることが考えられた。