日本農村医学会雑誌
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症例報告
舌根部まで進展した進行舌癌の制御に動注化学放射線療法が有効であった1例
安井 昭夫脇田 壮松井 義人小出 大貴丸尾 尚伸北島 正一朗森 章浩速水 亘時田 清格寺澤 実
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2021 年 70 巻 1 号 p. 62-68

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抄録

 近年,進行口腔癌に対して動注化学放射線療法が報告されており,原発部位の外科的切除術を回避することによって形態・機能が維持されている。今回我々は,進行舌癌に対して発音・嚥下機能を温存する動注化学放射線療法を施行した1例を経験したので報告する。
 症例は71歳男性で左側舌縁部から舌根部にかけて大きさ43×28mmの潰瘍性腫瘤が認められた。生検にて扁平上皮癌との病理診断を得て,画像検査にて左側舌癌(cT3N0M0,stageⅢ)の臨床診断となった。治療は左側舌動脈にPUカテーテルを留置し,動注化学療法はdocetaxel(DOC:15mg/m2/週,総投与量60mg/m2),cisplatin(CDDP:5 mg/m2/日,総投与量125mg/m2)と放射線治療(2 Gy/日,総線量50Gy)との連日同時併用療法を行なった。治療後の生検にて腫瘍細胞を認めず,治療効果は完全奏効が認められ原発部位の外科的切除術は回避とした。治療終了6年経過しているが,再発および転移は認められず,発音や嚥下障害もなく経過良好である。

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© 2021 一般社団法人 日本農村医学会
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