抄録
本研究は健康成人が仰臥位から能動的起立後180秒間立位を維持し,その間に手掌部発汗量と併せて心拍数と経皮的酸素飽和度を測定し,起立直後からの変化の違いを比較することを目的とした。対象者は健康成人群(n=20)とした。心拍数は安静時(67.9±5.4/分)に比べ,立位後10秒時(91.7±15.8/分)に最高値,その後減少する傾向を示したが能動的起立開始から180秒時まで有意な増加が継続していた。経皮的酸素飽和度は安静時(99.1±1.3%)に比べ,立位後10秒時(98.1±1.0%)に減少していたが,その後安静時と有意な差がなく経過した。手掌部発汗量は安静時(0.0±0.0 mg / min / cm2)に比べ,立位後10秒時(0.26±0.06 mg / min / cm2)のみ有意に増加したが,10秒以降安静時と有意な差が消失した。能動的起立後180秒間立位を維持した対象者では,心拍数の変動が継続するが,経皮的酸素飽和度と手掌部発汗量は短時間で安静時の状態に戻ることが観察された。手掌部発汗量測定が心臓リハビリテーション患者の簡便かつ非侵襲的に使用できるモニターとなる可能性につき検討を進めたいと考える。