日本農村医学会雑誌
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研究報告
職員を対象とした臨床研究への関心と教育のあり方についての探索的研究1
─中核病院職員の臨床研究への関心は高いか?─
三浦 崇則三井 千鶴稲垣 久美子坪井 明日香織田 智治犬塚 斉度会 正人
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2022 年 71 巻 2 号 p. 94-100

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抄録
 エビデンスに基づいた医療を実践し,医療の質を向上するためには,臨床研究が重要である。しかしながら,我々は研究指導者の不在,研究方法の知識の欠落,統計解析方法の理解の不足など,多くの問題を抱えている。当院において臨床研究を実施するためのスタッフ教育は,少しずつ進められてきている。しかしながら,当院の医療スタッフが,臨床研究の実施および臨床研究関連の教育プログラムへの参加に関心があるかどうかは,これまで明らかにされていない。そこで本研究は,臨床研究および臨床研究関連の教育プログラムに対する医療スタッフの関心を調査するために,横断的アンケート調査を行なった。
 質問調査票は,当院の研修会に参加したスタッフ813人のうち718名(回答割合88.3%)から回答を得た。医療スタッフの51.0%が,臨床研究およびデータ分析に関心を持っていた。臨床研究およびデータ分析に関心を持つ医療スタッフにおいて,男性,既婚者および子供有が,それぞれ75.8%,58.9%および60.8%であった。特に,薬剤師(90.7%)および医師(69.1%)は,臨床研究およびデータ分析に対する関心が高かった。さらに,30歳代および40歳代の医療スタッフは,臨床研究およびデータ分析に関心があった。いくつかの要因の中で,性別(男性)および職種(薬剤師および医師)が臨床研究およびデータ分析への関心に強く影響していた。臨床研究やデータ分析に関心のある医療スタッフが参加したい教育プログラムは,統計処理の方法,論文の書き方,研究題材の見つけ方であった。他方で,臨床研究およびデータ分析に関心のないスタッフが参加したい教育プログラムは,論文検索方法,論文評価方法,データ解釈方法であった。
 我々は,研究指導者の不足を解決するために,臨床研究に関連する教育を臨床研究やデータ分析に関心を持つ職員に実施されることが望ましいと考える。さらに,我々は臨床研究およびデータ分析に関心のないスタッフにおいても,臨床研究に関連する教育プログラムを望んでいることを把握した。
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