抄録
秋田県平鹿地区および岩手県三陸沿岸の高田地区住民計2, 075名について, 右上腕骨のX線撮影を実施し, その皮質比率をみたところ, 加令に伴いそれは低下する傾向がみられた。その傾向は男より女が, 非農より農が, さらに三陸沿岸農漁民よりは内陸農民において著明にみられた。皮質比率の低下は一つの骨の老化現象を示すものであるため, おのおのの前者より後者の老化傾向が早い事になる。また老化群には高血圧者, 貧血者および農夫症 (十) の者が正常者群より多く, さらに彼等のinorg. P, Al-Pase値は正常者群より高く, 男の血清Ca値については逆に低値を示した。またこれらの値は農, 非農間でも若干の差がみられた。このような老化現象における農, 非農差および地域差の要因としては食生活, 労働条件等の人工的環境因子の他に水質, 土質さらには気象条件等の自然的環境因子が関与しているものと推察される。