日本農村医学会雑誌
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野生シュバイカによる中枢神経系の保護作用
培養細胞系を用いた機能性食物素材探索の試み
松谷 Knox洋子荒井 優気林 要喜知
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2001 年 50 巻 1 号 p. 7-14

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抄録

バラ科植物果実である中国産野生シュバイカがどのような作用を脳神経系に及ぼすかを調べるため, 幾つかの細胞変性系を用いて細胞障害の抑制あるいは遅延効果について検討した。ラット胎児由来の初代海馬ニューロンをトランスフェリン濃度を低めた無血清培地中におくと, 細胞死が誘導される。そこで, この細胞死に対して抑制効果を示すビタミンEやKを、基準にして, 組織抽出液の効果を調べたところ, シュバイカ抽出液は, 他の幾つかの植物と同様に著しい抑制作用を認めた。アミロイド前駆体蛋白質 (APP) の高発現グリオーマでは, クロロキン処理により細胞死が誘導されるが, この作用には, ビタミン類やシュバイカ, あるいは, その他の植物抽出液のどれもが, ほとんど抑制効果を示さなかった。しかしながら, クロロキン処理後の回復過程に対してシュバイカのみが促進作用を示した。さらに, 老齢チャイニーズハムスターにシュバイカ溶液を与え続けたところ, これらの生存日数が平均15%ほど増加し, 老齢動物における恒常性維持にも作用したと考えられた。以上のことから, 野生シュバイカには, 中枢神経系細胞に対する保護作用や免疫系を賦活化する生理活性物質が含まれると推察される。このような研究による抗痴呆性機能食品/食材の探索は, 21世紀の超高齢社会における人々の健康や我が国の農業に大きく貢献すると期待される。

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