日本農村医学会雑誌
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農村における生活習慣病の臨床疫学的研究
林 雅人
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2002 年 50 巻 6 号 p. 792-811

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抄録

農村部の都市化傾向は徐々に進行している。しかし, 現在でも都市近郊農村から山間農村まで差がなくなっているわけではない。その差をみる目的で, 都市近郊農村として広島市及びその周辺, 農村性の強い秋田県平鹿郡, 長野県佐久市および南佐久郡, その中間の島根県出雲市及びその周辺を対象として, 平成9年度, 11年度の集団健診成績から地域差の抽出を試みた。一方, 平成7年度と平成12年度の2回の健診時成績から5年間の経年変動を地域別に比較した。一方生活習慣が健康指標に及ぼす影響について, 秋田, 長野, 島根, 広島の4地域で健診受診時に食習慣と生活習慣についてアンケート調査を実施し, 健診データとの関連をまとめた。また運動習慣が健康指標に及ぼす影響について, 秋田, 長野, 島根, 広島の4地域で1日8,000歩以上の運動前後の平均値を比較した。その結果3か月間という短期問でもHDLコレステロールは各地域毎でも全体としても有意に上昇した。また, 非運動群のコントロールのとれた地域では体脂肪率の増加を運動が制御していることが裏づけられた。
生活習慣病の運動療法とQOLに関する研究は茨城で行った。その結果, 心筋梗塞における運動療法とQOLとの問には明らかな関連はみられなかったが, 心機能が良好な症例においてはQOLスコアが上昇する傾向がみられた。また糖尿病における運動療法は糖尿病の耐糖能の改善のみならず, QOLを向上させることが示唆された。高血圧患者の運動療法は血圧の下降効果のみならず, QOLを向上させることが示唆された。この他, 分担研究者が各地域毎に主題にそった研究を行った。すなわち秋田: 1.年齢別健診結果と生活習慣からみた生存率の検討, 2.食習慣が健康指標に及ぼす影響の検討, 長野: 生活習慣の一次予防対策の研究, 島根: 1.生活習慣と健康度についての断面調査からの検討, 2.農村におけるMultiple Risk Factor Syndromeの臨床疫学的研究, 広島: 継続健診受診しているhigh risk者の教育・指導効果について検討した。

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