抄録
令和4(2022)年度診療報酬改定において「透析時運動指導等加算」が加わり,透析中の運動
療法(指導)への関心が高まっている。透析中の運動療法(指導)を安全かつ効果的に実施する
ためには,透析療法や併存症の管理状況に加えて,多角的な身体機能評価から個々の症例に応じ
た運動処方が重要となる。透析患者に対する運動療法(指導)のための標準的な身体機能評価に
ついて臨床的に有意とされる最小変化量(minimal clinically important difference:MCID)の視
点から検討すると,透析中に実施する運動療法では,バランス機能の改善がMCID を超えない
報告が散見される。フレイルを合併する高齢透析患者などでは,バランス機能の改善を含めた多
角的な運動療法が推奨されており,標準的な身体機能指標を用いて多角的に身体機能評価を実施
し,透析中の運動療法に加えて,非透析日または透析前後の運動療法も併用しながら個々の症例
の身体機能に応じた運動療法プログラムの立案や運動処方を実施することが重要と考える。