抄録
鉄工所勤務の50歳の男性が, 硝酸系ステンレス防錆剤塗布作業中に発生した酸化窒素ガスおよびフッ化水素ガスを吸入し, 呼吸困難, 息切れ, 血痰等の症状を呈した. 2日後の胸部X線写真は両側肺門から拡がるびまん性浸潤影を示した. 7日後の入院時検査でFEV1.0%とPaO2の軽度低下を認めた. TBLBでは治癒傾向にある呼吸細気管支炎を認め, BALF所見では総細胞数と空胞変性を伴なう大型のマクロファージが増加していた. NO2ガス吸入例では線維性閉塞性細気管支炎 (BFO) の予防のため一般にステロイドが長期投与されるが, 本例では経過中一度も使用せず, 一年経過後も異常を認めない. 一年後のBALF所見では総細胞数, 細胞分画共に正常化していたが, Leu7陽性率のみ健常者に比して上昇していた. BALF中のマクロファージの数的, 質的変動を認めたことより, BFOの発生に対するマクロファージの役割について検討した.