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鈴木 正史, 寺本 信嗣, 須藤 英一, 小川 桂子, 滑川 妙子, 盛田 和治, 松瀬 健, 滝沢 始, 大内 尉義, 福地 義之助
1997 年 35 巻 12 号 p.
1305-1311
発行日: 1997/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
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我々は気流閉塞のみられない成人男女240名を対象として, 口腔内圧法による最大吸気筋力 (PImax), 最大呼気筋力 (PEmax) の加齢変化を検討した. PImaxは, 男女ともそれぞれ加齢にともない低下した. PEmaxも, 男女とも加齢によって低下がみられた. PImax, PEmaxは, それぞれ身長, 体重, 全肺気量, 握力と有意の相関がみられた. さらに年齢, 身長, 体重, 握力を説明変数として多変量解析を行うとPImaxについては男女とも握力のみが独立予測変数として検出され, PEmaxについては男性は握力のみが, 女性は握力と体重が独立予測変数として検出され, いずれも年齢は予測変数ではなかった. したがって, 吸気・呼気筋力は加齢にともなって男女ともに低下するが, 年齢や体格そのものが決定要因ではなく, 握力に示されるような骨格筋力の低下などのいくつかの要因を含む加齢性変化によって生じている可能性が示唆された.
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寺本 信嗣, 松瀬 健, 大賀 栄次郎, 片山 弘文, 福地 義之助, 大内 尉義
1997 年 35 巻 12 号 p.
1312-1317
発行日: 1997/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
Adeno-associated virus (AAV) vector による培養ヒト気道上皮細胞への遺伝子導入に対する DNA topoisomerase I 阻害剤 (camptothecin: CPT) の効果について検討した. AAV vector 感染前にCPT処置を行うことにより, 感染効率 multiplicity of infection (moi) 1~100の範囲では AAV vector による遺伝子導入効率は約1.5-10倍に増加した. この効果は0.1~100μMの範囲ではCPTの濃度依存的に増加した. しかし, AAV vector 感染後にCPT投与した場合は明らかな効果はなかった. AAV vector による遺伝子導入はDNA合成期 (S期) の細胞で促進されることから, CPTの細胞周期への影響を検討したが, CPT処置によってS期細胞数は不変ないし減少した. 従って, CPTの遺伝子発現増強作用は, 細胞周期に対する影響ではなく, 細胞内の DNA polymerase などの酵素群の活性亢進などの細胞機能の変化を介している可能性が示唆された.
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長内 忍, 秋葉 裕二, 松本 博之, 中野 均, 菊池 健次郎
1997 年 35 巻 12 号 p.
1318-1323
発行日: 1997/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
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低酸素負荷時の末梢化学受容体および中枢神経系におけるドパミン (DA) の役割を検討するため, 麻酔ウサギの換気応答をDA受容体刺激薬とDA受容体拮抗薬を使用して検討した. 本研究では末梢化学受容体求心線維 (頸動脈洞神経) 温存群と切断群について, 恒常法 (FIO
2=0.10, 3分間) による低酸素負荷を行い, 横隔神経電位を呼吸出力の指標として低酸素換気応答 (HVR) を評価した. 次に, DA受容体刺激薬 (アポモルフィン, 0.3mg/kg, i. v.) およびDA受容体拮抗薬 (ハロペリドール, 0.5mg/kg, i. v.) 投与後のHVRについて検討した. 温存群におけるHVRはアポモルフィン投与によって減弱する傾向があり, ハロペリドール投与により増強した. 一方, 切断群では低酸素負荷後に負荷前よりも横隔神経電位は低下した. この抑制はアポモルフィン投与による影響を受けなかったが, ハロペリドール投与により抑制の程度が増強した. 以上より, ドパミンは, 末梢化学受容体においてはHVRを減弱し, 中枢神経系ではHVRを増強すると推測された.
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大野 彰二, 押川 克久, 北村 諭, 斎藤 建
1997 年 35 巻 12 号 p.
1324-1329
発行日: 1997/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
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膠原病肺における肺癌合併の臨床病理学的検討を行った. 73例の膠原病肺症例のうち9例 (12%) に肺癌の合併を認め, そのうち1例が重複癌であった. 組織型は腺癌5病変, 扁平上皮癌2病変, 小細胞癌および大細胞癌, Large cell neuroendocrine carcinoma 各1病変ずつで, 末梢発生が7病変であった. 肺癌の病期は, 膠原病肺経過観察中に発症した7例では stage IIIA以下が6例であった. 末梢発生の肺癌7病変のうち既存肺構造との関連性では蜂窩肺内あるいは蜂窩肺と健常肺の境界に発生したものが3病変であり, それらは膠原病肺として6年以上経過した症例であり, 膠原病肺に合併した肺癌はIIP症例ほど濃厚に線維化病変に関連して発生している傾向ではなかった. また, 治療経過として手術後あるいは化学療法後に放射線療法を施行していないのにもかかわらず, 間質性肺炎の急性悪化を認めることには注意する必要があるものと考えられた.
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健常人との比較
塚口 勝彦, 岡村 英生, 徳山 猛, 岡本 行功, 夫 彰啓, 山本 智生, 仲谷 宗裕, 小林 厚, 米田 尚弘, 成田 亘啓
1997 年 35 巻 12 号 p.
1330-1337
発行日: 1997/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
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肺結核患者の病態とT細胞機能との関連を調べるためにCD4
+ αβ (CD4
+) T細胞とγδT細胞サブセット別のエフェクター機能を患者群と健常群とで比較検討した. BCG生菌刺激時の増殖能, 菌貧食単球に対する特異的細胞傷害能, IFN-γ産生能は両T細胞サブセットとも患者群で健常群に比し有意に低下, IL-10産生能は有意の高値を示した. 患者CD4
+ T細胞とγδT細胞のBCGに対する反応性は抗結核治療後に部分的に回復したが, 健常群と比較すると依然低レベルのままであった. これらの結果から全般的なT細胞エフェクター機能の低下が肺結核の病態に関連しているが, IL-10などの抑制性因子の亢進もその病態に関与している可能性が示された. また, このような患者のT細胞の反応性低下は患者の素因によっている可能性が示唆された.
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安部 幹雄, 細川 芳文, 堀江 孝至
1997 年 35 巻 12 号 p.
1338-1346
発行日: 1997/12/25
公開日: 2010/02/23
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慢性肺気腫患者 (CPE群) 9名と呼吸器疾患のない高齢者 (NE群) 9名を対象に, 吸気閾値負荷 (ITL) 装置を用いて Martyn らの2分間漸増負荷法で呼吸筋耐久力を測定し, 健常若年者 (NY群) 9名と比較した. また11例 (CPE群8例とNE群3例) にトレッドミル運動負荷テストを行い呼吸・循環指標を比較し, ITLテスト時の安全性も検討した. 呼吸筋耐久力の指標は, 最大負荷重量 (Wmax) と最大負荷時の最大吸気閉鎖口腔内圧 (MIP) に対する平均ピーク吸気口腔内圧の比 (Ppk/MIP at Max Load) を用いた. Wmaxは, CPE群で有意に低下し, Ppk/MIP at Max Load, ITL耐久時間, トレッドミル耐久時間と正相関を認めた. 両テストにおいてSaO
2,の有意な低下と心拍数および平均血圧の有意な増加がみられ, SaO
2と心拍数の変化はITLで少なかった. ITLテストは, 慢性肺気腫患者や高齢者に容易に施行でき, 心循環器系への影響も少なく安全で, 呼吸筋耐久力の評価に有用と考えられた.
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前野 敏孝, 生方 幹夫, 前野 有理, 須賀 達夫, 茂木 充, 高柳 昇, 高橋 雅治, 永井 良三
1997 年 35 巻 12 号 p.
1347-1351
発行日: 1997/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
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症例は51歳, 女性. 顔面神経麻痺のため, 柴苓湯の投薬を受けたのち, 乾性咳嗽, 発熱, 労作時息切れが出現し入院. 入院時LDHが481IU/Lと上昇し, PaO
2 73.1Torrと低酸素血症を, %VC 64.1%と拘束性障害を認めた. 胸部X線上は両下肺野にスリガラス様陰影を認めた. 入院翌日より柴苓湯の内服を再開したところ, 乾性咳嗽と労作時息切れの増強, 低酸素血症の進行を来し, 気管支肺胞洗浄液中のリンパ球数増加, CD4/CD8の低下, および柴苓湯に対する気管支肺胞洗浄液 (BALF) を用いたリンパ球刺激試験 (LST) が陽性を示したことより, 柴苓湯による薬剤性肺臓炎と診断した. 柴苓湯に対するLSTはBALF中で陽性を示し, 診断に有用であった. 柴苓湯による薬剤性肺臓炎の報告は4例とまだ少ないが, 今後薬剤性肺臓炎の原因の一つとして注意が必要と考えられる.
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吉富 淳, 佐藤 篤彦, 須田 隆文, 千田 金吾
1997 年 35 巻 12 号 p.
1352-1355
発行日: 1997/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
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症例は86歳の女性で, 気管支拡張症感染増悪のため1996年6月10日に緊急入院し, 気管内挿管下に人工呼吸管理となった. 病室は3階の個室でほぼ毎日家族が付き添っていた. 口腔内洗浄も連日行われていたが, 6月19日に鼻腔, 口腔から体長約1cmのハエ幼虫 (ヒロズキンバエ) が20匹以上出現した. 虫体を除去するとともに, 内視鏡にて鼻咽腔から喉頭を観察したが, ハエ幼虫の温床となるような化膿性病変や壊死性病変は指摘できなかった. 経過から, 挿管後数日の間に親バエが鎮静剤の投与された患者の鼻腔または口腔に産卵したと考えられた. 清潔を旨とする病院においてもハエの侵入は認められ, ハエ幼虫症という事態が起こり得ることに留意する必要がある.
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井上 彰, 猪岡 望, 小西 一樹, 進藤 百合子, 鈴木 沢也, 小野 康夫
1997 年 35 巻 12 号 p.
1356-1362
発行日: 1997/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
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症例は55歳男性. 昭和63年より特発性間質性肺炎として経過観察中であったが, 平成8年1月より腎機能障害と貧血が急速に進行し, 血痰も認めたため精査入院となった. 第3病日に多量の喀血を生じ, 抗糸球体基底膜抗体陽性により Goodpasture 症候群と診断されたが, 同時にMPO-ANCAの高値も認められた. ステロイドパルス療法・免疫抑制療法・血漿交換などの治療により, これらの抗体の陰性化と喀血・血尿などの症状の消失を認めたが, 低酸素血症の遷延による全身状態の悪化のため第28病日に死亡した. 剖検により, 腎糸球体に基底膜上のIgGの線状沈着を伴う半月体形成性糸球体腎炎を認め, 肺は著明な出血を伴った間質性肺炎像を呈していた. MPO-ANCAが肺胞毛細血管障害をもたらし, 間質性肺炎の誘因となり, さらには抗糸球体基底膜抗体の産生と, 肺胞出血の発症に深く関与していたと考えられた.
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中嶋 治彦, 大平 徹郎, 斎藤 亮彦, 佐藤 一範, 五十嵐 謙一, 鈴木 栄一, 荒川 正昭, Tatsuya Kutsuwada
1997 年 35 巻 12 号 p.
1363-1367
発行日: 1997/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
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症例は57歳の男性. 1996年4月中旬より発熱, 咳嗽, 呼吸困難が出現し, 細菌性肺炎の診断で入院した. 入院後, 呼吸不全が急速に進行し, 人工呼吸管理下においた. 抗菌薬治療と大量ステロイド療法にも関わらず, 低酸素血症はさらに増悪したので, 第2病日より体外膜型肺 (ECMO) による血液酸素化を開始した. 同日よりエリスロマイシン (EM) 点滴静注を追加したところ, 肺炎は次第に軽快し, 酸素化も改善したため, 第6病日, 開始から92時間でECMOから離脱出来た. 全身状態の改善に伴い, 第13病日には人工呼吸管理からも離脱し, 第86病日に退院した. 血清抗体検査によりレジオネラ肺炎と診断した.
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杉田 学, 繁田 正毅, 三宅 康史, 坂本 哲也, 青木 茂行, 松岡 緑郎, 永山 剛久
1997 年 35 巻 12 号 p.
1368-1371
発行日: 1997/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
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血清学的に陰性であったが, polymerase chain reaction (PCR) 法を用いて診断に至った恙虫病の一剖検例を経験した. 症例は54歳男性. 長野県に単身赴任中に感冒症状を訴え近医受診, セフェム系抗菌薬の投与を受けたが改善しなかった. 胸部X線写真上の異常陰影と高度の肝機能障害を呈し, 対症的治療に反応せず集中治療目的で当救命センター入院となった. 両上下肢に紅斑散在, 右大腿内側, 左足甲の痂皮の存在より恙虫病を疑いミノサイクリンの投与を開始したが症状の改善無く, 経皮的心肺補助等の積極的治療の甲斐なく死亡した. 従来の血清学的検索では診断がつかなかったが, 血液, 死体肺組織を用いたPCR法により Karp 型リケッチアのDNAを証明し, 恙虫病と診断した. 剖検では従来報告されていない, 急性の出血性膵炎が認められた. PCR法は今後志虫病の急性期の診断に有用と考えられた.
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小橋 吉博, 中島 正光, 二木 芳人, 松島 敏春
1997 年 35 巻 12 号 p.
1372-1377
発行日: 1997/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
症例は16歳, 男性. 咳嗽, 咽頭痛が出現したため, 感冒と思い, 市販の総合感冒薬を内服していたが, 翌日から咳嗽が増強, 発熱, 喀痰, 呼吸困難感も伴うようになった. 2日後の胸部X線で両肺野に広汎な浸潤影を認め, 入院となった. 検査上, 著明な低酸素血症, 好酸球増多を伴う白血球の増加, 画像上は逆肺水腫型の浸潤影を認めたため, 臨床的に薬剤性肺臓炎を疑い気管支鏡検査を施行した. 経気管支肺生検では肺胞腔内に著明な好酸球浸潤およびフィブリン析出があり, 好酸球性肺炎に合致した組織所見で, 気管支肺胞洗浄では好酸球が細胞成分の50%と著明な増加をとっていた. リンパ球刺激試験では小柴胡湯のみが陽性を示し, 同剤による薬剤性肺臓炎と推察した. 推定原因薬剤の中止およびステロイド剤の投与により臨床症状, 低酸素血症, 胸部X線写真の改善を認めた. 市販の総合感冒薬に含まれていた小柴胡湯による急性好酸球性肺炎と考えられた症例を経験したので報告した.
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小林 哲, 田口 修, 安井 浩樹, 畑地 治, 吉田 正道, 小林 裕康, 足立 幸彦, Esteban C. Gabazza
1997 年 35 巻 12 号 p.
1378-1382
発行日: 1997/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
症例は50歳, 男性. 鼻閉で発症. 近医で加療されるも改善なく来院. 胸部X線像にて左下肺野に浸潤影を認め, 胸部CTスキャン像では気管から気管支にいたる全周性の壁肥厚を認め, 左下肺野に気管支狭窄による二次性変化と思われる炎症性変化を認めた. 気管支鏡検査で粘膜の発赤・腫脹を認め一部気管支では尖形狭窄様であった. 気管支粘膜生検組織では Congo red で染まる無構造様物質の沈着があり, 過マンガン酸カリ処理に抵抗性でかつ免疫グロブリンL鎖のλ鎖に陽性でALλ型の気管気管支アミロイドーシスと診断. また, 下鼻甲介腫瘤があり切除標本で気管粘膜と同様の病理組織変化を認めた. 鼻腔内病変を伴った気管・気管支アミロイドーシスは非常に稀である.
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猶木 克彦, 山口 佳寿博, 副島 研造, 青木 琢也, 井上 卓, 佐藤 長人, 島田 尚登, 福永 興壱, 工藤 裕康, 金沢 実
1997 年 35 巻 12 号 p.
1383-1388
発行日: 1997/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
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症例は61歳男性. 健診での血尿を契機に膀胱上皮内癌と診断され, BCG膀胱内注入療法を3回施行された後, 肝障害が出現したため入院となった. 入院後胸部X線写真上著明な両側びまん性肺野濃度上昇および重篤な低酸素血症を認めた. BAL所見はリンパ球優位の細胞数増多, CD4/CD8値上昇, TBLBで非乾酪壊死性肉芽腫を認め, 喀痰, 尿, 血液, BAL液中のBCG菌は陰性, BCGに対する血液リンパ球刺激試験 (DLST) は強陽性であった. 以上より, BCGに対する過敏性間質性肺炎と診断し, 抗結核薬, ステロイドパルス療法, ステロイド維持療法を施行した. これらの治療により胸部X線写真所見, 低酸素血症は改善しBAL液のリンパ球比率, CD4/CD8値も低下した. 本症例は膀胱癌に対するBCG膀胱内注入療法によって発症した重症間質性肺炎の一例であり, 治療に伴うBAL液の細胞成分の推移を経時的に観察し得た貴重な症例と考えられる.
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BALでの follow up study
冨岡 洋海, 藤山 理世, 大西 尚, 桜井 稔泰, 多田 公英, 坂本 廣子, 岩崎 博信, 今中 一文, 橋本 公夫
1997 年 35 巻 12 号 p.
1389-1394
発行日: 1997/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
骨, リンパ節, 皮膚, 肺と多彩な病変を呈した multifocal Langerhans cell granulomatosis の1例を報告する. 症例は喫煙歴のない18歳, 男性. 頸部リンパ節腫脹で発症し, さらに気胸を併発, 頸部リンパ節と皮疹の生検にて Langerhans cell granulomatosis と診断された. 頭部MRIでは, 左側頭骨にガドリニウム造影によりエンハンスされる腫瘤性病変を認めた. 胸部 high resolution CTでは, 肺野に薄壁嚢胞性病変をわずかに認めるのみであったが, bronchoalveolar lavage (BAL) では総細胞数の増多を認め, うち10%にS-100蛋白陽性細胞を検出した. 経口ステロイド剤の投与にて骨, リンパ節病変は消退し, BALの再検にてもS-100蛋白陽性細胞は検出されなくなった.
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川上 かおる, 門田 淳一, 阿部 航, 飯田 桂子, 白井 亮, 加勢田 誠, 河本 定洋, 藤井 毅, 松尾 武, 河野 茂
1997 年 35 巻 12 号 p.
1395-1399
発行日: 1997/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
症例は50歳, 女性. 乾性咳嗽と労作時息切れを主訴に来院. 胸部X線上両側下肺野に粒状網状影を認めたため, 間質性肺炎を疑われ入院. 動脈血酸素分圧の軽度低下がみられ, 気管支肺胞洗浄液所見では, リンパ球比率が46%と著増し, CD4/CD8比は0.31と低下していた. 胸腔鏡下肺生検を施行し, 病理学的に分類不能の間質性肺炎と診断された. その後の経過中, 尋常性乾癬とリウマチ性多発筋痛症を発症し, プレドニゾロン投与が開始された. 約4年の経過観察中であるが, 現在のところ肺病変の軽度改善を認める以外は著変を認めていない. 尋常性乾癬とリウマチ性多発筋痛症に合併した間質性肺炎の報告はなく, 興味深い症例と思われ報告した.
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中山 智子, 橋本 修, 荒井 邦彦, 中沢 弘企, 堀江 孝至
1997 年 35 巻 12 号 p.
1400-1406
発行日: 1997/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
肺の primary acute cavitation と中枢神経系に多発性結節を認めたサルコイドーシスの20歳男性例を経験した. 本症例は咳嗽, 頭痛を主訴とし, 胸部レントゲン写真上, 両側肺門と縦隔リンパ節腫大, 両側肺野に多発性空洞陰影, および, びまん性粒状影を認めた. 経気管支肺生検にて非乾酪性類上皮細胞性肉芽腫が証明され, 感染や線維化の所見が認められないため primary acute cavitation in sarcoidosis と診断した. 頭痛の精査にて頭部CT施行するも所見なく, 頭部MRIにて多発性の結節を認めた. サルコイドーシスにおいては肺に原発性空洞を呈することは稀であり, また, 中枢神経系サルコイドーシスで多発性結節性病変を示すものも稀である. 本症例のように, 頭痛を認めた場合にはMRI検査を施行し, 病変の有無を確定する事が必要であると思われた.
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松山 航, 溝口 亮, 岩見 文行, 廣津 泰寛, 川畑 政治, 納 光弘
1997 年 35 巻 12 号 p.
1407-1412
発行日: 1997/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
症例1は26歳女性. 18歳時に気胸で当院入院し肺好酸球性肉芽腫症 (以下肺EG症) の診断を得た. 手術にて気胸治癒し呼吸困難消失, 21歳時より通院自己中止し喫煙を開始, 結婚し2児の母となる現在も寛解を得られている. 症例2は27歳男性. 20歳時より喫煙していたが23歳時気胸で当院入院し肺EG症の診断を得た. 気胸治癒し呼吸困難消失, 外来通院していたが25歳時より通院自己中止, 以後喫煙再開したが27歳の現在寛解が保たれている. 症例3は20歳男性. 喫煙経験なし. 21歳時に気胸にて当院入院, 肺EG症の診断を得た. 同時に尿崩症も指摘された. 気胸治癒後も呼吸困難持続するためプレドニンの内服を開始し呼吸困難改善, 以後漸減し現在プレドニン内服していないが寛解を得られている. 肺EG症は比較的希で今後も症例の蓄積が必要な疾患である. 今回我々は特徴的な経過を辿った肺EG症の3例を比較的長期に観察しえたので報告する.
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田澤 立之, 西條 康夫, 阿部 達也, 佐藤 研, 渡辺 彰, 八巻 重雄, 貫和 敏博
1997 年 35 巻 12 号 p.
1413-1417
発行日: 1997/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
左膝窩静脈の血栓が原因と考えられる肺血栓塞栓症を呈し, 抗リン脂質抗体症候群 (APS) と強皮症 (PSS) との合併と診断された稀な症例を経験した. 患者は51歳の女性. 呼吸困難を主訴に入院. 胸部X線写真で左2弓と肺動脈の拡大, 心エコー検査で右房と右室の拡大, 肺血流シンチグラフィーで楔状欠損の多発, 静脈造影で左膝窩静脈に狭窄がみられた. 抗核抗体は陽性, 梅毒血清検査で生物学的偽陽性, IgG抗カルジオリピン抗体が陽性だった. レイノー症状の既往と手足より近位部の皮膚硬化所見よりPSSと診断された. APSは全身性エリテマトーデスとの合併例が多いがPSSとの合併は稀であり, さらに肺血栓塞栓症を伴う報告例は本例が第1例である. PSSの循環系障害は微小血管病変による肺高血圧, 腎機能障害が主であるが, 本症例ではAPSに関連する凝固線溶異常により深部静脈血栓症さらに肺血栓塞栓症を生じたと考えられる.
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大島 美紀, 早田 宏, 織田 裕繁, 渡辺 章文, 桑原 正雄
1997 年 35 巻 12 号 p.
1418-1424
発行日: 1997/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
症例は66歳女性で夜間咳嗽, 喘鳴, 黄色痰を主訴に受診した. 末梢血好酸球増多, 血清IgE値の上昇, Aspergillus (A.) fumigatus に対する即時型皮内反応強陽性, RAST上昇と沈降抗体陽性で, 中葉に無気肺と浸潤影を認めるが, 中枢性気管支拡張は認めなかった. 気管支鏡にて中葉入口部に粘液塞栓を認め, 粘液栓子中には多数の好酸球と真性菌糸性菌要素を認め, 真菌培養にてA. terreus が分離培養された. 免疫電気向流法による沈降抗体価がA. terreus で有意にA. fumigatus に比し高かったことから, A. terreus によるアレルギー性気管支肺アスペルギルス症と診断した. ステロイド剤の内服と吸入で順調に改善しつつある.
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中村 治彦, 勝海 東一郎, 永田 真一, 斉藤 誠, 小中 千守, 加藤 治文
1997 年 35 巻 12 号 p.
1425-1429
発行日: 1997/12/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
血清腫瘍マーカー (CA19-9, CA125, NCC-ST-439) が高値を示した39歳, 女性の肺葉内肺分画症の1例を経験した. 病巣は左S
10に存在し, 胸部大動脈からの異常動脈が流入していた. 病巣切除後, 術前高値を示した腫瘍マーカー (CA19-9 2,418U/ml, CA125 50.3U/ml, NCC-ST-439 13.0U/ml) は次第に低下し正常値に復した. CA19-9の血中半減期は約7日であった. CA19-9は分画肺の気管支上皮細胞で産生されていることを免疫組織化学で確認した. 肺分画症では時としてCA19-9が異常高値を示すことがあり診断の一助となると思われる.
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中川 義久, 島津 和泰, 蛯原 桃子, 阿萬 久美子
1997 年 35 巻 12 号 p.
1430-1433
発行日: 1997/12/25
公開日: 2010/02/23
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フリー
症例は60歳の女性. 陳旧性肺結核の胸部レントゲン経過観察中であった. 昭和55年までは右上肺野に肺結核による硬化像と小空洞を認めるのみであったが, 昭和59年頃より空洞内に菌球像を認めるようになった. その後, 菌球周囲の硬化像が増悪し, その後浸潤影が出現, 菌球が不鮮明になり, 一過性に血中アスペルギルス抗原が陽性となり平成8年には巨大な菌球像へと成長した. 本症例はアスペルギルスによる菌球が直接, 周囲に浸潤しながら空洞壁を破壊し, 成長していったものと考えられ, 長期にわたり経過を観察し得た貴重な症例と考えられた.
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