抄録
肺良性腫瘍のなかでも, 稀と思われる, 気管支内に発育した軟骨腫に対して, 外科的切除を行い治癒せしめた1例を経験したので報告する. 症例は27歳, 女性. 主訴は咳嗽と喀痰である. 約3年前より, 発熱とともに上記症状を繰り返し, 左上肺野の異常陰影を指摘され, 肺炎として治療を受けていたが, 症状の発現頻回となり当院に入院した. 胸部X線写真上, 左上肺野に浸潤影あり, 気管支造影及び内視鏡検査にて, 左主気管支の腫瘤による狭窄が認められたが, 生検および細胞学的検査では悪性所見は認められなかった. 気管支内良性腫瘍と, これによる慢性閉塞性肺炎が疑われ, 左上葉切除兼気管支管状切除術が施行された. 腫瘍は, 組織学的に, 気管支内に発育した軟骨腫と診断された. 患者は, 36ヵ月後現在健在であり, 従前通りの生活に復している. 著者等の検索した限り, 本例は本邦における endobronchial chondroma の6例目に相当すると思われる.