抄録
難治化の要因については, 既に1972~74年に histamine 吸入試験とSAB所見の併用から 1) 著しい気道過敏性, 2) 慢性気管支炎の合併, 3) 慢性肺気腫の合併, などをあげた. 今回, 新たに, 4) 慢性副鼻腔炎の合併, 5)β受容体刺激剤連用による薬剤耐性のほか, 6) 抗原の吸入による感作・発作の反復がβ受容体数の減少のみならず, 運動などに際する catecholamine の分泌亢進抑制を起して気管支拡張剤投与時におけるcAMPの上昇を抑制し, 要因となりうることを報告した. しかも検討の過程で, cAMPが血漿では増加, 肺・気道系では不変という場合もあることが分った. 更に, 難治化・重症化の要因としての気管支粘液栓の成立機序を究明し, 気管支攣縮もその主因になりうることを証明した. 一方, 迷走神経興奮のみならず, β受容体の不完全遮断状態にもある難治患者の薬物療法としては, 新抗コリン剤の開発, adenyl cyclase に直接作用する forskolin のほか, cGMPを増加させる 8Br-cGMP, nitroprusside などの臨床応用が有望なことを強調した. なお, 最後にまとめた「一般的な管理・治療の方針について」は, 紙数の関係で別の論文 (診断と治療73巻12号, 1985) に記した.