1986 年 24 巻 10 号 p. 1083-1087
70歳の男性が顔面と前胸部の紅斑で当院に紹介された. ステロイド軟膏療法をうけても紅斑が増悪し, 更に両膝蓋部, 両肘部の紅斑, 四肢の筋肉痛と筋力低下が現れた. 右上腕筋肉生検の結果は皮膚筋炎であった. 諸臓器精査が行われ, 左下肺葉に肺癌が発見された. 左下葉切除後に皮膚筋炎症状がしだいに消失した. 術後3ヵ月目に間歇性腹痛が出現し, 腹部CTでは右副腎, 左腎門, 傍大動脈リンパ節の転移を示唆する所見を示した. 腫瘍は更に皮膚に転移して化学療法を繰り返したが食欲不振, 全身状態の悪化が進行し, 肺切除術後8ヵ月目に急性肺炎で死亡した. 皮膚筋炎の再発はなかった.