抄録
症例は26歳, 女性. 昭和49年 Raynaud 現象と四肢の関節痛が出現した. 昭和52年発熱, 頬の蝶形紅斑, 四肢伸側に円形紅斑, 光線過敏症に気付き, LE細胞及び抗核抗体の陽性を認め, SLEの診断の下にステロイド療法を受けていたが, 昭和60年3月より咳嗽, 労作時息切れを認め, 4月当科に入院した. 胸部X線上両肺野にびまん性に粟粒状, 小結節状, スリガラス様陰影を認めた. TBLBによる標本の電顕像で肺実質にアミロイドに特徴的な non-branching 線維が確認された. 過マンガン酸カリ処理後の Congo red 染色と蛍光抗体法でこのアミロイド線維はAA蛋白由来であることを証明した. SLEとアミロイド症の合併は稀であり, 現在まで僅かに9例の報告があるが, これらは殆んど腎にアミロイド沈着を認めた. 本症例はアミロイド症による腎症状はみられず, 肺にアミロイド沈着を証明した. SLEにおける肺アミロイド症の合併例としては本例が最初のものとみられる.