日本胸部疾患学会雑誌
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両側血性胸水をきたした actinolite による石綿肺の1例
玉置 淳安藤 稔谷野 俊輔山脇 功川上 雅彦金野 公郎滝沢 敬夫
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1986 年 24 巻 3 号 p. 309-315

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抄録
症例は51歳の男性. 昭和24年より19ヵ月間, 秩父長瀞の鑞石採堀工場にて砕石作業に従事. 昭和59年10月頃より乾性咳嗽, 労作時息切れ, 左胸痛が出現した. 胸部レントゲン写真にて両側胸膜肥厚, 両側中下肺野の不整形線状陰影とともに左胸水貯留を指摘された. 胸水は血性で, 索状, 棍棒状異物が認められ, 気管支肺胞洗滌液の肺胞マクロファージにも異物を貪食した phagolysosome が多数みられた. 生検肺組織は胞隔の肥厚と線維化が著明で, 炭粉沈着に伴って針状構造物が認められ, X線微小分析により角内石系 actinolite と同定された. さらに秩父産鑞石からも actinolite が多量に検出されたため, 本症例は actinolite 石綿肺, benign asbestos pleurisy と診断された. しかし胸水中の異物は halloysite と同定され, 本鉱物の侵入経路とともに胸水貯留との関連性について検索が必要と思われた.
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