日本胸部疾患学会雑誌
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「蚕 (カイコ)」体成分の吸入に起因する過敏性肺炎 (養蚕者肺症) の1例
梅枝 愛郎松井 茂色川 正貴片貝 重之中沢 次夫飯塚 邦彦三浦 進笛木 隆三小林 節雄北市 正則
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1986 年 24 巻 7 号 p. 804-809

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抄録

「蚕 (カイコ)」体成分の吸入に起因する過敏性肺炎 (養蚕者肺症) の1例を報告した. 症例は48歳女性, 養蚕農家の主婦で咳, 痰, 労作時息切れ等が「繭かき」「ケバ取り」などの養蚕作業と関連して出現. 初診時軽いチアノーゼを認め, 胸部で捻髪音聴取. 血沈亢進, CRP (2+), 白血球増多, 低酸素血症, 胸部レ線でスリガラス様陰影を認め, 肺機能で拘束性障害と拡散能の低下がみられた. 免疫学的検査ではツベルクリン反応陰性で, 蚕体成分の一つである熟蚕尿に対する沈降抗体陽性であった. 肺組織には胞隔炎, 類上皮細胞肉芽腫, マッソン体が認められた. 入院後症状の自然改善が見られ, 血沈等が正常化し, ラ音の聴取されないことを確認して熟蚕尿による吸入誘発試験を行った. 吸入後捻髪音が出現し, 拡散能は前値に比し30%低下したため, 誘発試験陽性と判定した. 以上より本症例は蚕体成分である熟蚕尿に起因する過敏性肺炎 (養蚕者肺症) と診断した.

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