抄録
虚脱肺を再伸展した際, 肺水腫の発生が知られている. この再伸展性肺水腫の発生機序に関し, 未解決な点が多い. 我々は, 慢性肺リンパ瘻を有する羊を用い, 対照群 (n=4), 2時間虚脱後再伸展群 (n=4), 24時間虚脱後再伸展群 (n=4) で検討した. 対照群では, 肺リンパ流量, リンパ―血漿蛋白濃度比 (L/P比), 循環動態, 血液ガス等安定していた. 2時間虚脱後再伸展群では, 肺虚脱時及び再伸展後, リンパ流量, L/P比に変化はなかった. 肺虚脱時, 肺動脈圧の上昇と動脈血酸素分圧の低下が見られたが, 再伸展によりこれらの値は前値にもどった. 24時間虚脱後再伸展群では, 再伸展後リンパ流量は増加した. L/P比は, 24時間虚脱時から上昇しており, 再伸展後も高い値を保った. 肺動脈圧は5cmH2O程上昇し, 2時間虚脱群と異なり, 再伸展後もこの値を保った. 長期肺虚脱, 又これに続く再伸展は, 微少血管壁損傷をひきおこし, 血管壁透過性を高めた.