抄録
閉塞型睡眠時無呼吸症候群 (OSAS) は男の中高齢者で多い. その原因の一つに咽頭の断面積とその力学的特性が関係するとされているが, これらのパラメータの正常値についてはほとんど知られていない. 本研究では健常者181人 (年齢21~69歳) を対象とし, 音波を用いた気道断面積測定法を用いて咽頭断面積と咽頭コンプライアンスを測定した. さらにその性差, 年齢差, 体位差, 体格差について検討した. 咽頭断面積は座位では男が女より大きいが (男3.79±0.08cm2, 女3.33±0.05cm2, p<0.01), 臥位では差はなかった. またどの体位でも咽頭断面積は加齢により変化しなかった. 座位での咽頭断面積は体格 (身長, 体表面積) の影響を受けなかった. 咽頭コンプライアンスは男で女より大きかった (男0.024±0.001, 女0.018±0.001cmH2O-1, p<0.01). また男でのみ年齢と正の相関があった(r=0.30, p<0.01). これらの正常者のデータはOSAS患者のデータを評価するための基礎になると思われる.