抄録
今回我々は原発性肺癌に伴う癌性胸膜炎に対し Adriamycin の新しい誘導体である Pirarubicin (THP-ADM) の胸腔内投与を行い, その有用性について検討した. 対象は胸水細胞診にて癌性胸膜炎と診断された原発性肺癌症例20例で全例胸腔内治療歴のないものとした. Performance status (PS, Eastem Cooperative Oncology Group (ECOG)) はPS1が8例, PS2が9例, PS3が3例であった. 臨床病期分類はIIIB期が14例, IV期が6例である. 方法は原則として可能な限リチューブドレナージ法で胸水を排液した後, THP-ADM 30mg/m2を胸腔内へ注入した. 成績は全体の奏効率が50.0%で胸腔穿刺法施行例では14.3%, チューブドレナージ法施行例では69.2%で有意差をもって後者が高かった (p<0.05) が Median Survival Time (MST) には差がみられなかった. 重篤な副作用はみられなかった. 原発性肺癌に伴う癌性胸膜炎に対してチューブドレナージ法を用いたTHP-ADMの胸腔内投与は有用であると思われた.