日本胸部疾患学会雑誌
Online ISSN : 1883-471X
Print ISSN : 0301-1542
ISSN-L : 0301-1542
緩徐な発育経過を示した限局型の悪性胸膜中皮腫の1例
坂巻 文雄岡本 晋向井 万起男山澤 文裕石坂 彰敏金沢 実川城 丈夫横山 哲朗沢藤 誠菊池 功次
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 31 巻 2 号 p. 240-244

詳細
抄録
症例は37歳の男性. 健康診断の胸部X線写真にて右中肺野に径約2cm大の結節性陰影を指摘された. 5年前から胸部X線の同部位に陰影を認め, 腫瘍径は増大傾向を示した. 気管支鏡下の生検では紡錘型の腫瘍細胞の増殖を認め, 線維肉腫を疑った. 他臓器に原発巣と考えられる所見はなく, 原発性肺肉腫の術前診断で右上葉切除術を施行した. 手術標本では胸膜に一部連続し内部に大小の嚢胞状の空隙を伴う腫瘍で紡錘型細胞が豊富に認められた. 線維肉腫との鑑別が困難であったが, 細胞分裂像が多く認められたことおよび免疫組織化学染色 (サイトケラチン染色, EMA染色) で陽性となる細胞を認めたため, 限局型の悪性胸膜中皮腫と診断した. 5年間にわたり胸部X線上肺野の結節性陰影を呈した限局型の悪性胸膜中皮腫症例は稀と考え報告した.
著者関連情報
© 日本呼吸器学会
前の記事 次の記事
feedback
Top