抄録
サーファクタント蛋白-A (SP-A) は肺胞II型上皮細胞 (II型細胞) からのサーファクタント分泌を抑制する. しかしSP-Aは大部分がサーファクタント脂質と結合しており, 脂質存在下でSP-Aがこの作用を示すか不明である. 今回は, 精製サーファクタント, 精製SP-Aおよび合成脂質リポゾームを用いてこの点を検討した. II型細胞からのサーファクタント分泌能は, TPA刺激による標識脂質の分泌によって評価した. その結果, 1) 精製サーファクタントによる標識脂質分泌抑制はSP-Aよりも脂質成分に依存している, 2) 精製SP-Aによる分泌抑制は脂質リポゾーム存在下で阻止される, 3) 肺内に存在する遊離型SP-Aは分泌を抑制しない, ことが示された. 以上より, SP-Aのサーファクタント分泌抑制は潜在作用であり, サーファクタント分泌は主にその脂質成分量によって制御されていることが示唆された.