オレイン酸急性肺損傷犬を用いて肺水腫発生時に肺内ガス交換が拡散障害によって障害されるか否かを解析した. 肺内拡散障害を定量的に評価するためその血液・ガス分配係数 (λ) または組織拡散係数 (d) が異なる3種の不活性ガス (アセチレン, エチレン, フレオン-22) を指標ガスとして用いた. 3種指標ガスを含む生食を持続投与し, それらが肺から排泄される効率 (排泄率: E) を測定した. d値が等しくλ値が異なるアセチレンとエチレンの実測E値より近似的に求められるフレオン-22の予測E値 (VA/Q分布のみから予測されるフレオン-22の排泄率) とフレオン-22の実測E値とを比較することにより拡散障害の有無を検討した. 解析の対象とした全例においてフレオン-22の実測E値は予測E値よりも低値を示したので肺水腫を伴う急性肺損傷の肺内ガス交換障害の一部は水腫液貯留に起因する拡散障害によってもたらされたものと結論した.