抄録
症例は55歳の材木業に従事していた男性で, 昭和61年5月に右前胸部痛を主訴として当院を受診した. 胸部X線写真にて胸膜肥厚および石灰化を指摘され, 開胸胸膜生検にて慢性胸膜炎との組織診断が得られた. 同時に, 胸部X線CTでは, 胸部大動脈周囲に線維化病変と考えられる soft tissue density lesion が認められ, 顕微鏡的血尿も指摘されたが, 原因は明らかにできなかった. 昭和63年12月より排尿障害が顕著となり, 平成元年1月に泌尿器科を受診すると, 後腹膜線維症によると考えられる両側尿管狭窄のため, 両側水腎症をきたしていることが判明した. この後腹膜病変は, 当初認められた胸部大動脈周囲の線維化病変と類似の画像所見を示しており, 後腹膜腔に同様な線維化病変が出現したものと考えられた. このような病態の原因は不明だが, 胸膜の線維化病変を先行病変とし, 後に後腹膜病変が生じる病態はきわめて稀なものと考えられたため, 文献的考察を加え報告した.