日本胸部疾患学会雑誌
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HOT患者における酸素非吸入時の肺内血行動態変化
石橋 豊生馬 勲盛岡 茂文森山 勝利
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1994 年 32 巻 8 号 p. 715-720

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抄録

一年間の在宅酸素療法 (HOT) を受けている患者19例において, 酸素吸入中断の肺内血行動態におよぼす影響について検討した. いずれもHOT開始前に空気呼吸下で肺内血行動態を測定し, 一年間のHOTの後, 19例中10例 (A群) は酸素吸入下で一年後の血行動態測定を行い, その後酸素吸入を2時間中止し再度測定し, 他の9例 (B群) は検査4時間前に酸素吸入を中止して測定し, その後酸素吸入を再開して2時間後再度測定した. A, B両群の振り分けは交互に行った. 平均肺動脈圧はA群ではHOT前, HOT一年後の酸素吸入下それぞれ27.2±7.2, 20.4±3.2Torrと一年後の酸素吸入下で有意な減少を認めたが, 2時間の酸素吸入中止によりHOT前値に再上昇 (26.2±5.2Torr) した. B群ではHOT前, 一年後ともに有意な変化を認めなかった. 一年後の酸素吸入再開後も低下傾向を示すものの有意な減少を示さなかった. 一年後の両群間の差の要因として, 酸素吸入中止による肺動脈圧の比較的早い再上昇, 再吸入による緩やかな回復が考えられ, HOT患者における酸素吸入の不用意な中断は肺内血行動態に明らかな変化を来し, 右心不全の引金ともなり得ることが示唆された.

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