日本胸部疾患学会雑誌
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肺クリプトコッカス症と胸腺腫を合併したHTLV-1キャリアーの1例
井上 祐一藤井 毅大坪 孝和森 理比古石野 徹久野 博河野 茂原 耕平綾部 公懿富田 弘志Mitsuo KakuHironobu KogaHiroshi Mukae
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1994 年 32 巻 8 号 p. 778-784

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抄録

症例は, 46歳, 女性. 平成3年12月の検診で上縦隔に腫瘤影を指摘され, 精査のため入院. 胸部X線およびCTにて甲状腺下部から上縦隔にかけて径8cm大の腫瘤と, 右上葉に径2cm大の薄壁空洞陰影を認めた. 手術標本にて縦隔腫瘍は胸腺腫, 右上葉の空洞陰影は肺クリプトコッカス症と診断した. HTLV-1抗体 (PA) は2,048倍と陽性で, 末梢血にはATL細胞は認めず, HTLV-1キャリアーと考えられた. 細胞性免疫では, NK活性の低下を認めた. 胸腺腫は小リンパ球主体でATL細胞のような細胞異型性や多形成は見られなかったが, このリンパ球に provirus DNA の組み込みが認められた. HTLV-1キャリアーで肺クリプトコッカス症と胸腺腫を発症し, さらにHTLV-1キャリアーと胸腺腫との間に, 何等かの因果関係が示唆された症例を経験したので報告する.

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