日本胸部疾患学会雑誌
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慢性呼吸不全に対する肺理学療法の効果
金森 一紀大久保 圭子
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1996 年 34 巻 4 号 p. 397-403

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抄録

安定期の慢性呼吸不全43例に対し肺理学療法を施行し, その効果を検討した. 理学療法は2ヵ月のプログラムに従い, (1) 患者教育, (2) 横隔膜呼吸訓練, (3) 呼吸筋強化訓練, (4) 歩行および自転車エルゴメータによる運動療法を中心に行った. 理学療法開始前の12分間歩行試験施行中のSpO2最低値が, 90%未満に低下した者をA群 (32例), 90%以上を維持できた者をB群 (11例) とし, A群の運動療法にあたっては SpO2 90%以上を維持することを目標とした. その結果, 両群とも12分間歩行距離および最大歩行距離は増加した. A群ではVC, FEV1, PaO2も有意に増加したが, B群では血液ガス・肺機能に有意な変化は認められなかった. A群のうち, 肺気腫ではVC, FEV1, PaO2が増加したが, 結核後遺症ではPaO2のみ有意に増加した. 慢性呼吸不全患者に対する肺理学療法によって, 運動耐容能の改善のみならず, 症例によっては肺機能・血液ガスの改善も期待しうると思われた.

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