1996 年 34 巻 7 号 p. 833-836
症例は61歳, 男性である. I期胸腺腫に対し胸腺腫胸腺全摘術を施行した. 術後6ヵ月目に上行大動脈と上大静脈の間に再発し, 再手術により腫瘍を完全切除した. 再発時の腫瘍は非浸潤性胸腺腫であり, 遺残胸腺組織からの多中心発生による再発と考えられた. 組織学的には初回と再発時の腫瘍は同一所見を示し, リンパ球優位型で上皮細胞は polygonal の胸腺腫であった. I期胸腺腫でも多中心性発生により術後局所再発する事があるので拡大胸腺全摘術が必要であり, またその早期発見のためにCTによる長期間の経過観察が必要であると思われた.